Magic Pot

スタートアップのための、コンテンツマーケティング19の手法

500 Startups JapanはグローバルVCとして、その学びを日本のスタートアップエコシステムに関わる皆様に提供しています。今回は500 Startupsのパートナーでグロースマーケターの、Susan Su氏による、コンテンツマーケティングの具体的な方法をご紹介します。


コンテンツマーケティングについて話をする際、多くの方が「コンテンツ=ブログ」だと考えていることに気付かされます。確かにそうですが、実際にはブログはコンテンツの一部に過ぎません。本来コンテンツとは、読み物だけでなく観(見)たり、聞いたりする物すべてを表しています。コンテンツマーケティングの文脈では定量化・計測・反復しやすくするため、もう少し特定のものを指しているだけです。

つまりコンテンツとは、あらゆる形態で創り出され、あらゆるタイプのチャネルで拡散されます。そして一度創り出されたコンテンツは、トラフィックとコンバージョンを生み出す、魔法のポットになる可能性を秘めています。

今回はブログ以外の、コンテンツマーケティングのアイディアを19個ご紹介します。

オフラインの体験型コンテンツ

1, カンファレンス主催
すべてのカンファレンスがコンテンツマーケティングであるというわけではありません。主催者の事業が、イベント体験そのものを提供することである場合などは、それは単なるカンファレンスです。一方で、Google I/Of8といったカンファレンスのように、単独の主催者により開催され、イベント主催者と、イベント参加者へサービスやプロダクトを販売するベンダーが同一の場合は、コンテンツマーケティングと言えるでしょう。

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コンテンツマーケティングで重要なことは、「コンテンツ+ディストリビューション」です。イベントの内容は動画や音声、文章で記録され、ソーシャルメディアなどで拡散されます。また開催後、記録した内容を自社のYoutubeチャンネル、ブログ、雑誌で拡散することもできます。

2, カンファレンス登壇
第三者の開催するカンファレンスで登壇することは、ブランドのマーケティングに加え、あなた自身とあなたの企業のコンテンツマーケティングとなるでしょう。

イベントを主催する場合と異なり、オペレーションや戦略にリソースを割く必要はありません。プレゼンテーションの準備には20~40時間以上かかりますが、一度登壇すると、より多くの機会に恵まれることが多いでしょう。

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Rand Fishkin氏、Ramit Sethi氏、Oli Gardner氏などトップクラスのスピーカーや、Apple Keynotesを参考にすると良いでしょう。

3, ミートアップや飲み会を開催する
大規模なSaaSベンダーではなく、カンファレンスを開催するほどのリソースを割けない場合には、規模を小さくしてミートアップや飲み会を開催するのも良いでしょう。

500 Startupsのファウンダー、Dave Mcclureは「招待されるのではなく、主催者になれ」とエンジェル投資家の卵の集まりにディールフローを自ら作り出す方法について語りました。

私がFacebook Platformの開発者にデータやコンテンツを販売するスタートアップ、Inside Networkにいた頃、f8(Facebookの開発者のカンファレンス)に伴ってパーティーを開催しました。すると、会場周辺には行列ができ、コアビジネスへの流入がたくさんありました。 このパーティーのメインのコンテンツは、厳選された招待客のリストだったのです。

音声や動画コンテンツ

4, Podcasts
米国でPodcastを発信する人が増えている通り、可能性は大きいでしょう。

500 StartupsのSheel Mohnot氏とJosh Muccio氏による、投資に関するPodcast、The Pitch podcastはローンチから1年経たないうちに、週間2万ダウンロード以上を達成しています。

5, 動画番組
Youtube上でオリジナルの動画番組シリーズを発信しましょう。化粧品の定期購入サービスであるipsyは、Youtube上でオリジナルのドキュメンタリー番組シリーズを配信しています。一見特別なことはしていないようですが、とても引き込まれます。

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6, 動画広告
コンテンツ要素が高いコマーシャル動画には、コンバージョンが期待できます。例えば、SK-Ⅱは「Change Destiny」という動画広告シリーズを配信しています。これは CMというよりも、むしろドラマと言えるでしょう。

印刷物コンテンツ

7, オリジナルのガイド本
ミシュランは人々がより長距離を移動する動機を与えることで、タイヤをより多く売ろうと考え、1990年にミシュラン・ガイドを立ち上げました。タイヤや車の部品事業を拡大するために、市場そのものを拡大しようと考えたのです。

今日、ミシュランガイドはコンテンツマーケティングであると同時に、ブランドマーケティングとしてもとても成果をあげています。コンテンツそのものがビジネスになったと言えるでしょう。

8, オリジナルの雑誌
大学や航空会社、ホテルといった、体験を売るビジネスにおいて、オリジナルの雑誌は有効なコンテンツです。顧客流入とエンゲージメント向上のチャネルとなり得るでしょう。

アメリカンエアラインが刊行するAmerican Wayは年間1億9300万人に、ユナイテッド航空が刊行するHemisphereは年間1億4000万人にリーチしています。

またカンファレンス同様、雑誌はマネタイズが成立するプロダクトともなり得ます。カンファレンスではスポンサーやチケットの売上が、雑誌では広告収入が収益になるのです。

9, 書籍を出す
Ramit Sethiが書いた若者向けの資産管理本、「I Will Teach You To Be Rich」 はベストセラーとなりました。Ramith氏の場合、書籍を発売することは拡散のためのチャネルの1つであると理解していたので、本を出して終わりではありません。

一般的には書籍を出版すること自体がプロダクトで、そこで終わりだと思ってしまいます。しかし、書籍を刊行することにより、ファネルにおける認知の部分を大量に獲得できるのです。さらにこの場合、高品質で貴重な情報をすでに提供しているので、購買にまでつながりやすいでしょう。

10, コラムの連載を持つ
自分のビジネスと関連するニュース雑誌で、自分自身のコラムを持つということは、自分の考えを自分の言葉で表現することです。上手く行けば、業界のオピニオンリーダーとして関心を集めることができるでしょう。

ゲストライターとして始めるのもいいかもしれませんが、それだけで終わってはいけません。継続できるようにすることと、一つのテーマに沿った内容にすることが重要です(そのテーマに関するオピニオンリーダーになれるように構成しましょう。)

教育という形のコンテンツ

11, 授業で教える
教育機関にとって、実際の経験を語れる人の授業を開講するメリットは大きいでしょう。そして講義をする実践者にとっても、コンテンツマーケティングやブランド構築という文脈でメリットがあります。

500 Startupsはスタンフォード大学のProfessional Development Centerで、エンジェル投資に関する二週間の教育コースを開講しました。この教育プログラムからは多くのコンテンツを生み出すことができ、500 Startupsのブランド構築や、ファンドへの投資家候補を増やすことに繋がりました。

起業家教育で著名なSteve Blank氏によるスタンフォード大学、バークレー大学、コロンビア大学で開講された授業はMOOCのUdacity上でも受講が可能になっています。UdemyCourseraのようなオンライン学習サービスをみれば、コンテンツマーケティングとしての事例をたくさんみることができるでしょう。

12, Webinar
Webinarは特に高い水準のコミットメントを必要とする製品(高額もしくは、密接な関係性が必要なもの)において、コンバージョンしやすい手法でしょう。

私も実際に「スタートアップのためのコンテンツマーケティング」というWebinarを投稿しました。すると2万ものPVがあり、500 Startupsのチャンネルの、「スタートアップ、グロースマーケティング、コンテンツ」といったキーワードのランクをあげてくれました。

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以下の場合にWebinarを使うことができます。

  • SaaSやB2B
  • デモ
  • ハウツーコンテンツ
  • Q&A
  • リアルタイムの分解解析
  • 新製品の発売やイベントのプロモーション

13, オリジナルのオンライン学習コース
教育は人を説得するのにとても良い方法です。なぜなら会話をする前から、価値と権威を明らかにし、信頼を獲得しているからです。
Steve Chou氏はMy Wife Quit Her Jobという、6回に渡るメールによるオンラインコースを提供しています。

これにより、メールアドレスを登録させて見込み客を増やすための施策としてだけでなく、コンバージョンを促進する施策としても有効です。

14, 学習センター
投資銀行のSchwabは、ハウツー動画や記事、ニュース解析やデータツールを提供する学習センターを開設し、既存顧客のエンゲージメントを増やしています。

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ダウンロードコンテンツ

15, 電子書籍
電子書籍は価値を認めてもらいやすく、 アマゾンでも配信できます。電子書籍のダウンロードページの前にメールフォームを設置すると、普段はメール登録しない人でも登録してくれますし、その情報を本当に欲しているユーザーだけのメールアドレスを集めることができます。

さらに、電子書籍はブログよりも長く、データやなにかしらの発見を示すので、マスコミなどからの注目も集めることができるでしょう。

16, ダウンロードPDF
電子書籍と似ていますが、より短いコンテンツのことです。ブログよりも価値が高いため、メール登録から取得できるようにするのも有効でしょう。

ダウンロードPDFは特にB2Bにおいて効果があります。

17, ダウンロードスプレッドシート
とても便利なため、欲しいという人は多いでしょう。

コンテンツマーケティング目的での、スプレッドシート配布の典型的な事例の1つに、AppSumoの創業者Noah Kagan氏によるクオンツ(数量的手法)マーケティングのためのスプレッドシートがあります。これにより同氏は数千ものメール登録を獲得することができました。

画像コンテンツ

18, インスタグラム
インスタグラムはあらゆるソーシャルメディアのなかでも、最もコンテンツマーケティングらしいものでしょう。

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もしインスタグラムマーケティングに興味があるのなら、Foundr Magazine’s Instagram guideをご覧になると良いでしょう。

19, インフォグラフィック
Neil Patel氏はsummary of the method and components of a great infographicで、キーワードランクとシェアされやすさに基づき、どのようにトピックを選ぶべきか、またどのようにデータを見つけるべきか、どのようにDribbbleでプロのデザイナーを見つけるべきかといったことをまとめています。

インフォグラフィックには賛否両論あります。

  • 肯定的な意見:視線を集めやすく、ソーシャルチャネルでシェアされやすいため、急速に広がりやすい。
  • 否定的な意見:作るのが大変で、効果的なデザインが求められる。 Piktochartといったサービスを使って作るのも良いですが、できればプロのデザイナーに頼むべき。

以上、19のコンテンツマーケティングのアイディアでした。どのような形式であれコンテンツマーケティングをする際に重要なことは、「スパムではない」ということです。マーケティングであり、プロダクトでもあるのです。コンテンツを作成するときは製品を作り出すかのように入念であるべきでしょう。そしてそれを拡散するときにも時間をかけましょう。

私は基本的に文章を書くのは速い方ですが、1つのブログ記事をリサーチから作りあげるまでに約30時間を費やしています。もしそんなに費やせない、書くのが好きではないという方は、ブログ記事以外のこれらのコンテンツを試してみるとよいでしょう。

最後に、私は日々、「コンテンツマーケティング=コンテンツ+ディストリビューション」であると自分自身に戒めています。このまとめが皆さんの役に立つことを祈っています。

原文記事


500 Startups Japanでは、シリコン・バレーを始めとする世界50カ国で1600社に投資した経験から得た知恵やノウハウを、日本の起業家へ伝えていくことを目指しています。毎週様々な起業家やメンター、投資家によるストーリーを配信しているので、是非Facebookページをフォローして、最新情報をチェックしてください!

 


 

Miyako Yoshizawa

慶應義塾大学看護医療学部4年。ベンチャーキャピタルや外資系証券会社の証券リサーチ部でIT市場のリサーチを経験した後、大学での専門を生かし、ヘルスケアITに注目。米国のヘルステック系スタートアップについて取り上げるサイト「HealthTech News」を2013年に立ち上げる。

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