Emily Chiu

シリコン・バレーに学ぶ、スタートアップがM&Aを成功させるために必要なこと(前編)

今回は500 Startupsのパートナーで、M&Aチームを率いるEmily Chiu氏にインタビューを行いました。スタートアップがM&A EXITする上で押さえておくべきことや、Emily氏はどのようにM&Aを活性化させているのかといったことについてお話を伺いました。


起業家と投資家両方の立場でM&Aを経験したからこそできる、EXIT支援

大学を卒業後Goldman Sachsに就職し、テクノロジーやヘルスケアの領域を専門とするインベストメントバンカーとしてM&A支援の経験を積みました。その後、スタートアップを2社立ち上げ、M&AによってEXITしました。ベンチャーキャピタルでのM&A支援は、スタートアップ側の気持ちも大企業側の気持ちも理解できる私だからこそできることが大きいと感じています。

私たちが行っている支援は大きく分けると、起業家に対する支援と、潜在的な買い手となる企業との関係構築といった2つがあります。

M&A未経験の起業家を教育する
起業家への支援として、まず必要なのは教育です。ほとんど全ての起業家にとって、M&Aは初めてのことです。どのような準備が必要で、いつ、誰に、どのようにアプローチするべきかといった指導を行っています。

M&Aの交渉中も起業家が事業に専念できる環境をつくる
事業に忙しい起業家の時間を守りつつ、理想的なディールを完遂できるよう、実際のM&Aの過程でもサポートに入ります。必要に応じて交渉や契約といった部分を支援しています。

潜在的な買い手との関係構築
事業拡大に専念する起業家にとって、M&Aのために事前に準備を行うリソースはありません。そこで起業家に代わって、継続的に買い手となりうる企業とのコミュニケーションを取り、関係を構築しています。そして投資先企業がM&Aすべきタイミングで、買い手となりうる大企業との最適な組み合わせを考えていきます。

これはかなりデートや恋愛に近いことで、双方ときちんとコミュニケーションが取れていることが必須となります。売り手のスタートアップと買い手となる大企業の両方にとって、良い出会いとなることを目指しています。

500 Startupsは、昨年1年間で、80社もの投資先スタートアップにこうしたM&A EXIT支援を行い、120社の買収を検討する大企業と交渉を行いました。

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500 Startups サンフランシスコオフィスにて

M&Aにおける、起業家がしがちな間違い

選択肢はIPOだけではない
ほとんどの起業家は、Facebookのような企業を目指そうとします。目標が高いこと自体は良いことですが、M&Aを選択肢として省いてしまうことは大きな損失になり得るでしょう。なぜなら、実際にはIPOできるスタートアップはごくごく一部で、多くがM&AによってEXITしています。さらにどちらもできず、会社を畳むしかなくなるというスタートアップがほとんどであるということが現実です。

初期の段階から売却によるEXITを否定し選択肢から除外するのではなく、現実を受け入れ、きちんとM&Aについて学ぶべきだと思います。まずはこれまでのM&Aの事例を見たり、M&Aの構造を知っておくと良いでしょう。

早すぎても遅すぎても良いM&Aとはいえない
M&Aはタイミングが重要で、早すぎても遅すぎてもいいM&Aにはなりません。私はよくM&Aを結婚に例えるのですが、結婚は「結婚しよう!」と思ってもその日できるものではありませんよね。まず相手と出会って、恋愛をして、そして結婚する。M&Aにおいても相手が自分のどんなところを気に入ってくれているのか、その指標を理解し、伸ばしていくことが重要です。

しかしM&A準備を先延ばしにしていると、このようなプロセスを十分に経ることができません。さらに、バーンアウトが見えてきてから準備するのでは、選択肢が限られるのでとても危険です。残りの資金が6ヶ月を切ってからでは十分な準備をする時間がなく、会社を閉じるしかなくなってしまうので、理想を言えば12ヶ月以上余裕を持って、M&Aに向けて早く動きだすべきでしょう。

いずれのタイミングにせよ、選択肢を1つに絞ってはいけません。常に資金調達などの他の可能性を確保し、「M&Aをしない」という選択もできるよう余裕を持って行動しましょう。

複数と話を進めるべきだが、同じタイミングであるべき
M&Aにおいて、交渉相手は1社よりも複数であるべきです。それぞれ別のタイミングで話をしているという起業家も多いですが、実際は資金調達と同じように、同じ時期に複数の買い手候補と話を進めるべきです。


次回は後編として、M&Aの交渉におけるポイントと、日本のスタートアップのクロスボーダーM&Aについてご紹介します。是非Facebookページをフォローして、最新情報をチェックしてください!

Miyako Yoshizawa

慶應義塾大学看護医療学部4年。ベンチャーキャピタルや外資系証券会社の証券リサーチ部でIT市場のリサーチを経験した後、大学での専門を生かし、ヘルスケアITに注目。米国のヘルステック系スタートアップについて取り上げるサイト「HealthTech News」を2013年に立ち上げる。

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