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シリコン・バレーに学ぶ、スタートアップがM&Aを成功させるために必要なこと(後編)

今回は500 Startupsのパートナーで、M&Aチームを率いるEmily Chiu氏にインタビューを行いました。前回に引き続き、今回はM&Aの交渉で重要なことをご紹介します。


高い価値を見出してくれる売却先を見つけ、戦略を立てる

企業がスタートアップを買収する目的は、次の3つに分類できます。

  1. チームの獲得:特にエンジニアや特定分野の専門家
  2. 技術の獲得:ユニークな技術など
  3. 変化の獲得:一定のユーザー層を持っている場合など

買収の価格は、これらの目的によって変動します。ですから交渉の際には、買い手候補の企業が何を期待しているかを明確にすると良いでしょう。

例えば、人材獲得目的の場合、人材獲得コストと考えるため比較的買収額は安くなります。一方、それに加えてプロダクトも欲しい場合には価格は上がります。更に高額がつきやすいのは、例えばティーンエイジャーの熱い支持を持っているような場合です。買い手が重視している度合いによって異なりますが、新たに若い世代の顧客にリーチしたいと考えている企業であれば高い価値をつけるでしょう。

(稀に買収したいという企業が複数いる場合は価格が高騰することもあります。しかし基本的には、期待できないものとしましょう。)

このような相手のニーズを把握し、その企業に対し、自分たちをどういったポジショニングにして売るかという戦略を立てましょう。

買い手企業にとっての価値を明確にする

買収する企業にとって、スタートアップ買収はロジックで値段のつかない芸術品を買うようなものであることを理解しましょう。市場にリサーチが出ているわけでもなく、事業価値を裏付けるだけの十分な数字もありません。そこで創業者に求められるてくるのは、ストーリーテリングの力です。以下の3つの事項を伝え、相手の企業にどのような価値があるのか明確にしましょう。

  1. 買収により期待できること 買収したいという企業に対し新たな価値を創造する事業なのか、それとも特定の市場分野に秀でた事業なのか。
  2. 再現の難しさ 自分たちがどれだけの複雑なスキルのもとに成り立っていて、買収先には再現できないものであること。
  3. 買収による定量的なメリット 再現できないものを買収することで、時間と費用の節約という観点でどれだけ貢献できるのか。

売却しないという選択肢を持つ

ベストなディールをするためには、M&Aそのものを止めるという選択肢を持つことが重要です。お互いに価格などで納得できない場合、もう少し事業を育て、自分が納得のいく価格になるまで待つことができる状況にしておくべきです。

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日本のスタートアップにも、海外企業からの買収のチャンスはある

日本の場合、スタートアップがIPOしやすい環境があるからこそ、アメリカや他の地域と比べてIPOによるによるEXITが多いですよね。これは素晴らしいことですが、だからといってM&Aという選択肢が必要ないというわけではありません。

私は実際にこれまでに2社の日本のスタートアップのM&Aに関わる機会がありました。買い手候補として、日本企業だけではなく、アメリカの企業も挙がり、Googleも強い興味を示していました。他にもFacebookやGoogleのイベントに登壇していたインドのスタートアップが、アメリカ企業に買収されたり、韓国のスタートアップでもそういうケースを見てきました。つまり買い手が自分の国の会社だけではなく、海外の企業である可能性も十分にあり、クロスボーダーM&Aのチャンスは作れるものなのです。まずはカンファレンスなどに出てみるだけでもチャンスが見つかるかもしれません。

500 Startups JapanのJamesとYoheiは日本でエコシステム構築することを目指していますよね。スタートアップのビジネスを育て、それを大企業が見つけるというM&Aのネットワークはこのエコシステムの一部であり、とても期待しています。


500 Startups Japanでは、シリコン・バレーを始めとする世界50カ国で1600社に投資した経験から得た知恵やノウハウを、日本の起業家へ伝えていくことを目指しています。毎週様々な起業家やメンター、投資家によるストーリーを配信しているので、是非Facebookページをフォローして、最新情報をチェックしてください!

Miyako Yoshizawa

慶應義塾大学看護医療学部4年。ベンチャーキャピタルや外資系証券会社の証券リサーチ部でIT市場のリサーチを経験した後、大学での専門を生かし、ヘルスケアITに注目。米国のヘルステック系スタートアップについて取り上げるサイト「HealthTech News」を2013年に立ち上げる。

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