Sheel Eddie

激増するFinTech投資に対し、政府や支援者がすべき5つのこと

この記事は500 StartupsのFinTechファンドの代表である、Sheel Mohnotと、ベトナムファンドの代表を務めるEddie Thaiによるものです。500 Startupsはベンチャー投資の他に、様々な分野や地域におけるエコシステムの構築支援も行っています。


FinTech企業への投資はこの5年間で8倍にもなり、2016年の第一四半期だけでも200件以上、総額49億ドルが出資されています。

シリコンバレーの勢いは止まらない。多くの優秀な頭脳を持った人材と多額の資金が数百ものスタートアップに集まり、様々な方法でこれまでの伝統的な銀行をリプレイスしている。

J.P.Morgan Chaseの会長兼CEOのJamie Dimon氏は「シリコンバレーでは多くの優秀な頭脳と多額の資金が、数百のスタートアップに集まり、様々な方法で伝統的な銀行をリプレイスしています。スタートアップは弱点をなくしていくのが非常にうまい」と指摘しています。

四半期ごとの、FinTech企業へのVC投資は、めざましく増加しています。

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しかし、投資はすべての地域に行き渡っているわけではありません。例えば、2016年の第一四半期、中国のFinTech企業への出資は24億ドルだったのに対し (たとえそのうちの多くが、2件の超大型M&A案件によるものであっても)、他のアジア各国における出資は2億ドルにすぎません。

一方でヨーロッパでは、投資件数は増えていますが、投資額は増えていません。また、投資件数が増えていても、パフォーマンスが必ずしも良いというわけでもありません。

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なぜでしょうか。

500 Startupsは15か国で130社以上のFinTechスタートアップに投資し、世界中のエコシステムにアドバイザリーを提供してきました。その過程で、多くのエコシステムがFinTechで直面する、3つの中心となる課題を明らかにしました。

FinTechの3つの挑戦

1. 規制監督の仕組みは、FinTechには不適当である

金融業界における規制監督の多くは、不明瞭で非常にややこしく、またそのプロセスと監督機関は非常に動きが遅いため、時間がかかってしまいます。例えばアメリカでは、送金事業に関して(各州ごとに)異なる48の規則があります。多くの州が、州ごとに変わる保証債権を求めていて、この対応にはおよそ100万ドルがかかると言われています。この仕組み一つだけでも、多くのFinTech企業が事業を開始するのを妨げているでしょう。

2. 古くからの金融機関が(知ってか知らずか)、FinTech企業を押さえつけかねない

つい最近までアメリカでは、多くの銀行はFinTechの創業者とミーティングをしたり、カンファレンスに招待したりということをしていませんでした。

いくつかの銀行がFinTechスタートアップと関わりあうようになると、競合の銀行に対し優位になるための手段として、スタートアップの吸収や閉鎖を考えるようになりました。スタートアップが本来のポテンシャルを発揮できるのを妨げていたのです。

Visaが一定数のイシュアー(カード発行業者)やマーチャント(加盟店)を独占し、偏在しないというありきたりな仮説がほとんどだったのです。

3. 顧客は、まだFinTechサービスを受け入れられない

FinTechにおける顧客の獲得は、非常に難しいでしょう。

大規模な勧誘のための名簿を作ることは比較的簡単ですが、実際に人々が普段使う金融機関を変えさせるのはとても難しいことです。私自身(著者Eddie)も個人としては、いまだに数十年前に作った最初の口座がある銀行に預けています。保険、ローン、抵当の3つは、Google広告でももっとも単価が高いワードです。

米国の銀行は、一人のユーザーを獲得するのに500ドル以上もの費用をかけています。そのうち多くのスタートアップも同様のコストをかけなければいけなくなるでしょう。バイラル係数(サービスの顧客が、一定期間に各ユーザーが平均何人を招き入れるかを数値化したもの)の高い、他の市場とは異なり、FinTechは1000人目の顧客獲得以上に100万人目の獲得に時間を費やさなければなりません。

これらの挑戦は一日や二日でできませんが、何もできないということではありません。

政府が支援するための、5つの方法

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1. “Regulatory Sandbox” を構築することで、アーリーステージのスタートアップの可能性を守る

“Regulatory Sandbox”は既存の規制による縛りを気にせず、スタートアップが新しいアイディアを試せる機会を提供するものです。

プロダクトマーケットフィットを見つけ、ある程度の規模になる前のアーリーステージのスタートアップを規制することは、全体のリスク管理や消費者保護の両視点において、多くの場合必要のないことでしょう。

そこで、特定の規制からアーリーステージのスタートアップを免除することで、イノベーションと実験を可能にしようという構想が生まれました。すでにイギリスの金融行為監督機構(FCA /Financial Conduct Authority)はこの取り組みを行っていますし、豪州証券投資委員会 (ASIC/Australian Securities & Investments Commission) も同様の取り組みを検討しています。

2. 新しいFinTechプロダクトやサービスのために、迅速で明瞭な規制当局の審査を提供する

アーリーステージから成長した後は、スタートアップも規制を遵守すべきでしょう。

規制当局の審査において、数年かかっていたものを数ヶ月に、数ヶ月かかっていたものを数週間へといった、プロセスの削減と短縮を行うことは、実質的にリーガルコストを削減します。つまりスタートアップにとっては生死をわける問題になりうるということです。

3. FinTechスタートアップが規制上の要件を満たすよう支援する、体系的な仕組みを構築する

創業チームに金融や法的な経験の豊富なメンバーがいたとしても、市場の規則は困惑を招くものです。リソースを開発し分配していくことで、市場内の摩擦は軽減でき、アーリーステージのコンプライアンスを支援するでしょう。

FinTechを専門とするアクセラレータは、効率的な手法の一つです。例えば、500 StartupsのアクセラレーターにおけるFinTechサブトラックでは、コンプライアンスを順守するための重大な支援を道筋だってうけることができます。イギリスでは、FCAがスタートアップの金融規則を助ける専門家を備えた、イノベーションハブを創設しました。

4. 消費者意識のための活動を本格的に拡大し、需要の増加をねらう

金融に関する消費者のリテラシーを向上するための公共広告は、新しいFinTechプロダクトやサービスを考えるきっかけになります。これにより、FinTechのポテンシャルはより明確になるでしょう。

既存の顧客保護制度への基本的な意識を向上するキャンペーンでは、リスク関連の導入障壁を打開することができます。スタートアップがこれらのキャンペーンを行うのは費用対効果の視点からみると、割に合いません。これは明らかに「市場の失敗」であり、政府がこれを是正すべきでしょう。

5. 伝統的な金融機関がFinTechスタートアップに投資し、提携できるように促進する。それもなるべく非独占的に

いくつかの銀行やFinTechのスタートアップは、すでに競合するよりもパートナーシップを組んだほうが良いと察しています。ですから私たちはこの当面の状況を歓迎していきたいと思っております。

フォーマルなプロセスを構築するよりも、アライアンスを組めるようにしていくことがずっと大事でしょう。J.P.Morganもこの方向性をすすめるため、スタートアップのためのレジデントプログラムを開催することを発表しました。

最終的には、こうした取り組みを行ううえでのアイディアの選択や詳細な実装に関しては、それぞれの市場の環境によって決まってくるでしょう。しかしそれ以上に重要なのは、こうした取り組みが、幅広い投資やスタートアップ支援のためのエコシステムの一部となるように務めることでしょう。


もっと詳しく知りたいという方は、ぜひご連絡ください。
– FinTech投資について Sheel Mohnot (sheel@500.co)
– エコシステム開発と企業イノベーションのアドバイザリーについて Bedy Yang (bedy@500.co)

著者について

Sheelは500 Startupsのパートナーで、最近発表された500 FinTechファンドの代表を務めています。彼はこれまでに決済企業と高額掛け金のオークションサービス企業の、2社のFinTechスタートアップを華々しくEXITさせました。またThe Pitchという1万人以上のリスナーを誇る、podcastを立ち上げ、ホストとして情報を発信しています。

Eddieは500 Startupsのベンチャーパートナーで、新たに立ち上がった500 Startups Vietnamファンドの代表を務めています。また、500のコーポレートイノベーションとエコシステム開発のアドバイザリー提供を支援しています。彼はこれまでにFinTechスタートアップに出資していて、ベトナムでもFinTechスタートアップへの投資を促進するためにアドバイスを提供しています。

原文記事

Miyako Yoshizawa

慶應義塾大学看護医療学部4年。ベンチャーキャピタルや外資系証券会社の証券リサーチ部でIT市場のリサーチを経験した後、大学での専門を生かし、ヘルスケアITに注目。米国のヘルステック系スタートアップについて取り上げるサイト「HealthTech News」を2013年に立ち上げる。

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