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海外進出は不可能ではないー元サンリオ常務取締役・鳩山氏に聞く、海外成功の秘訣

500 Startups Japanでは、グローバルVCとしての実績やつながりを生かし、ポートフォリオ企業の海外進出を支援しています。海外へ事業を展開する際だけではなく、日本のスタートアップの海外トップVC・企業からの資金調達や、海外企業への売却も積極的に支援していきます。

今回は500 Startups Japanのメンターで、スタンフォード客員研究員の鳩山玲人さんにお話を伺いました。鳩山さんと言えば、日本のキャラクター・ハローキティを世界的ブランドとして確立させたご経験を持ち、現在でも国内外の大企業・スタートアップを支援されています。今回は日本企業を「真のグローバル企業」へと導いた、様々な取り組みについて語っていただきました。


嗜好性の違いをローカライズする

日本企業が海外へ展開する際には、様々な違いがあり、それぞれローカライズしていくことが必要になります。中でも一番大きな違いは市場です。市場が違えば消費者も異なり、消費者が違えばその好みも違います。これは人種や文化が違うというだけでなく、嗜好性が違うのです。嗜好性の違いはきちんと見ていく必要があります。

実際に日本とアメリカでは、同じキャラクターでも、求められている商品は違います。ハローキティの場合には、日本では雑貨がメインでしたが、海外ではジュエリーなどのファッション用品が求められていました。日本と同じものを売っていても、アメリカ人が本当に欲しいものは市場にありませんから、彼らは日本からの輸入で本当に欲しいものとは違う商品を買うしかなかったのです。この嗜好性の違いを理解していなければいけませんが、私自身はアメリカで学生として生活している時に一消費者の目線でこれに気づきました。

違いに気づいた後、ではなぜ市場にないのだろうか?と考えました。従来通り自分たちで全部やろうとするのではなく、得意なところを外部に任せることでより大きなものを作り出すことができるのではないかとわかり、ライセンシングの活用を行いました。例えばアメリカでセレブリティのあるジュエリーでは、自分たちではノウハウはありませんから、パートナーシップを組んで展開しました。Kimora Lee Simmons氏などの有名なデザイナーなどとコラボしたものはとても人気があったので、この領域をもっと強化していけば良いのではと考えたのです。

アメリカ人が欲しがっているものを作れるデザイナーチーム、デザインを商品にできるメーカー、商品供給ができる流通チーム、実際に販売する小売チームと言った部分をパートナーシップで確立していったのです。これが消費者感覚のローカリゼーションです。単に商品を横に流すだけではない、商社出身の私はこの組み合わせが得意だったのかもしれません。自分たちの小さいリソースで大きいものが動かせるのがパートナシップを組むことのメリット、すなわちライセンシングというビジネスモデルの良さでしょう。

こういった業界はユダヤ人が多いですから、かなり強気の交渉に来ます。これに対応出来るチームを作ることも重要でした。

海外で求められる交渉術

ライセンシングの交渉の際に、意識したことは2つあります。一つは、自分たちが提供しているビジネスが決して目新しいものではないと自覚し、競合を見ていくことです。その競合を含め、自分たちが属するマーケットがどのような力関係なのか、どのように回っているのか、どこがベンチマークになるのか知ることで、全く知識なしのゼロベースよりもずっと優位に交渉を進められるのです。私の場合には、小売の店舗に実際に足を運び、欲しいと思われているような他社の商品を手に取り、裏側を見るのです。するとメーカーがどこかなどの、ライセンシングの様子が想像出来ました。

もう一つは、交渉の書類やその基礎知識を整えることが重要でした。もちろん自分でも勉強しましたが、きちんとこの領域のバックグラウンドをよく理解している人をチームにいれることも大切です。私たちのようなコンテンツやエンタメとい 大企業の海外進出はスタートアップの状況と近いものがあります。どんな大企業といえども、たいてい現地では2、3人でゼロからの立ち上げとなります。誰も何もないような状況でしたから、スタートアップのような起業家精神が求められました。

現地採用の人材のキャリア形成には意味がある

人事や組織にもローカリゼーションが必要になりました。これは日本企業がやりがちなことですが、現地のトップやマネジメント層が全員駐在員なんです。社長も副社長も専務も部長も日本から派遣されている日本人でかつ英語ができない。すると彼らはマネジメントにおいて、日本の成功モデルを持ってきてしまうのです。一方で現地で成功するには、それぞれにあったマネジメントがありますから、経営レベルに現地の人材を入れていく必要があります。

そこで、現地採用の人材をマネジメント層に入れようとしましたが、現地の優秀な人材が長く会社に残っていない現状にも気付きました。マネジメント層全員が日本人では、外国人の彼らは会社でのキャリアアップを諦めてしまい、優秀な人材はどんどん外に出て行ってしまうということが起きていたのです。現地の人にとってキャリア形成ができる体制がないと、社内に優秀な人は残りません。こういった状況を踏まえ、外国人社員のキャリア形成と、マネジメント層の入れ替えを実施しました。会社は結局そこで働く人たち自身ですから、グローバル企業を目指すのであればグローバル人材の文化や慣習を尊重していくことが必要で、日本流に合わせさせるのは問題です。例えば、給料水準でも彼らは日本よりも高いですから、上げる必要があります。日本人は嫌がりますが、上げれば一人当たりの生産量も上がりますし、必要なことです。

日本人と現地のスタッフで補完しあうという、オペレーションの仕組み

私自身オペレーションも半分踏み込みたいタイプで、アメリカに限らず、ヨーロッパでもライセンシング、商品開発やマーケティングといろんなところに関わっていました。ただ自分でリードした案件も多数ありますが、基本的にはそれぞれ現地の優秀でかつセンスのあるチームと組んでやっていました。

ローカリゼーションだけではなく、現地では抜けがちな部分を埋める役割として日本の本社のスタッフなどが入るという取り組みを行っていました。欧米では、思っている以上に細かいディティールの部分が抜けてしまうことがあります。例えば、ローソン向けの商品開発をするとします。日本だとかなり細かいところまで詰めて、ローソンにあった流通や保管の方法といった部分まで最適化するノウハウがあります。しかし、欧米に行くと、突然「うちの商品買ってくれないか」というほどに大雑把になってしまいます。他にも、私たち日本人は目標達成に対する要因をひとつひとつ見ることに長けています。例えばゲームのキャンペーンをやった際に、日本ではその結果の要因を細く見ますが、アメリカやヨーロッパの人は見ないのです。こういった雑になりがちな部分を本社や日本人のスタッフが補うという仕組みで、うまく現地チームと協働していました。

逆に日本人にはなくて、アメリカ人が得意なことも当然ありました。とにかくアメリカ人はマーケティングが得意なんです。サンリオとしては、特に日本にはない年齢層の高い、ティーンエイジャー以上への商材をうまく作りだし、この層へリーチできたことが大きな貢献につながりました。そしてアメリカでうまくいった、セレブなどを使ったブランディングやマーケティングの手法を日本に持ってきたりといった取り組みは日本でも大きな成果を残しました。また、デジタル技術を使った施作もアメリカは取り組むのが早く、英語版ハローキティのFacebookページには約1370万のファン(2016年6月24日時点)がいます。現在では日本でもLINEスタンプなどが普及していますが、このような施策を早期からできたのはとてもよかったでしょう。

言語や文化の違いをどう乗り越えるのか

アメリカで仕事をする際に困るのは、実は言語ではなく、その先のコンテクストの違いです。コンテクストは教科書に書いてあるようなものではありませんから、それを学び、慣れていくのは大変です。世界の周辺国のコンテクストを知っていくには言葉だけではなく、どのようなことが起きているか、海外情勢を日頃から知っていることが重要です。そして案外、住んでみると分かってみたりもしますから、わからないことを前提で出ていくのもいいでしょう。

また、アメリカ以外の地域では、英語が第一言語でないために多言語になって複雑化してしまいます。グローバルになるときには、英語と日本語ができればいいと思いがちですが、文化や言語は思っている上に多様であることを知っている必要があります。

500 Startups Japanが提供できる価値とは?

500 Startupsはシリコンバレーで起きていることといった生の情報や、現地のつながりを持っています。日本の起業家がそれを体感できるのは素晴らしいことですし、情報だけではなく、実際に繋がることができることは重要です。海外の様々な領域にネットワークがあることで、興味があるところにダイレクトに繋がれるのです。この繋がりから世界的な競合やベンチマークを体感してください。

また様々なノウハウも提供できることも強いでしょう。海外へ行くときには資金やパートナーシップが必要で、これを引っ張ってくるためのノウハウを500 Startupsは持っています。これら海外進出のためのリソースを日本に持ってくることで、日本のスタートアップのグローバル化を助けるでしょう。シリコンバレーは日本とは比較にならないほど豊富なリソースを持っていて、とてつもないスピードでスタートアップをアクセラレートします。例えば、何かアイディアを実行に移そうとすると、彼らは人材採用も含めて1-2時間で作ってしまう。スピード感が全然違うのですい。売上を伸ばせるというような施作が3つあるとしたら、すべて実行してしまうアメリカだからこそ時価総額も数千億になるのです。これを日本でも行えるよう支援できる、アクセラレーターが求められているでしょう。


今回の内容をより詳しく知りたい方へ

hatoyama-san, book

世界の壁は高くない――海外で成功するための教科書

鳩山さんがアメリカで経験した様々な壁を詳細に綴った書籍です。海外進出を目指す皆さんにお勧めします。

プロフィール

鳩山氏は三菱商事に入社後 エイベックスやローソンなどでメディア・コンテンツビジネスに従事し2008年にハーバード・ビジネススクールでMBA取得 その年にサンリオ入社し、事業戦略や海外事業に従事されました。2015年よりサンリオ・メディア&ピクチャーズ エンターテインメントのCEOとして映画製作を行い、2016年6月にサンリオを退任。 同年7月に鳩山総合研究所を創業する予定で、スタートアップへの支援といった活動をより強化していくとのことです。米国経済誌「Business Insider」より、フェイスブックのシェリル・サンドバーグや政治家のミット・ロムニーと並んで「ハーバード・ビジネススクールの最も成功した卒業生31人」にも選出されるなど、世界的に活躍されています。現在はスタンフォード大学の客員研究員や、LINE、TRANS COSMOS、ピジョンの社外取締役を務めていらっしゃいます。

Miyako Yoshizawa

慶應義塾大学看護医療学部4年。ベンチャーキャピタルや外資系証券会社の証券リサーチ部でIT市場のリサーチを経験した後、大学での専門を生かし、ヘルスケアITに注目。米国のヘルステック系スタートアップについて取り上げるサイト「HealthTech News」を2013年に立ち上げる。

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