LINEのIPOが日本のエコシステムに好循環をもたらす理由

約1週間ほど前にTech in Asia のPeter Rothenberg氏は、LINEのIPOは日本のスタートアップ・エコシステムにとって良いことではない、という記事を発表しました。同氏の主張は、LINE が(厳密に言えば)韓国NAVERからのスピンアウトであることや、日本の従業員があまり株式を保有していなかったため、今回のIPOから大きな利益を享受する日本のファウンダー、投資家または従業員がいないのではないか、ということでした。また、結果として、スタートアップ・エコシステムの裾野を支えるであろう新たなエンジェルがあまり誕生しないことや、LINEの成功に貢献した人々が適切なリターンを受け取っていないため、(LINEがサービスとして非常に成功したにもかかわらず)日本の起業家のロールモデルとならないのではないかということを危惧しています。金銭の流れについて、Peterの考察が本質を突いている部分は確かに多いです。とは言え、LINEのIPOが日本のエコシステムにとって「良いことではない」という主張には同意することができません。

そもそも、LINEはスタートアップではありません。もし、もっと多くの株式による報酬があれば、より多くのエンジェル投資家を誕生させることはできたかもしれません。しかし、かといって、それによって日本の起業家のロールモデルとなるような人物が出現したのかと言われると、それもそうとは思えません。LINEの現CEOである出澤剛氏と前CEOである森川亮氏は共に、素晴らしいメンターであることに間違いありません。でも、彼らはLINEにおいては(純粋な意味での)起業家ではなかったのです。それでも、両氏の所有株式は、それぞれ4百万ドル(約4億円)と2百万ドル(約2億円)相当であり、これには現金報酬の金額さえ含まれていません。確かに、シリコンバレー級ではないかもしれませんが、エンジェル投資をするには十分な額です!とりわけ、森川氏はLINE退任以降、エンジェル投資をすでに開始しており、500 Startups Japanのメンターにもなっていただいています。

さらに重要なことに、LINEは10億ドル超の資金を調達できたので、これにより目論見書に明記している戦略的な投資と買収に充てる潤沢な現金を確保したことになります。LINEは、メッセージング戦争が終焉したことを認識しているのです。Facebook MessengerやWhatsAppのようなサービスと競合することに意味はなく、これからは主力市場の日本、タイおよび台湾に注力しなければなりません。こうした市場でシェアをより一層拡大するために、これからはメッセージング・アプリを補うサービスを探すことになるでしょう。

つまり、今回のIPOが意味するのは、日本のスタートアップ・エコシステムに新たな大物M&Aプレイヤーが登場したことであり、日本がまさに必要としていたことなのです。いままでの記事で繰り返し書いているとおり、日本のスタートアップ・エコシステムを促進するためには、日本におけるEXITを増やさなければなりません。EXITが増えればリターンも増え、リターンが増えれば起業家が増え、それを支援する投資家も増えるのです。

James Riney

Managing Partner & Head, 500 Startups Japan

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