Startup Pivot Pyramid

スタートアップのための、ピボットの法則

今回は500 StartupsのEIRであるSelcuk Atli氏によるブログをご紹介します。彼は以前BoostableとSocialWireというアドテクスタートアップを創業した経験を持っています。イスタンブールで育ち、フルブライト奨学金で渡米後、起業家としてYCombinatorを卒業しています。


2011年に私たちはシリコンバレーのトップクラスと言われている投資家から、200万ドルを調達しました。私たちはSocialWire(のちにManifestと社名変更)というスタートアップをやっていて、EC事業者向けにユーザーごとに商品を最適化できるサービスを提供していました。ユーザーがFacebookでアカウント登録した際に、簡単にその個人にあった商品などをパーソナライズできるよう支援するというものです。しかし、すぐに大企業が数年間もかけて最適化しているECサイトに、私たちのプロダクトを導入させるのは非常に困難だと気づきました。また、自分にパーソナライズされたものを求めてオンラインで買い物しているにもかかわらず、Facebookでログインしたいユーザーも多くないということもわかりました。

この時点では、調達した200万ドルのほとんどがまだ銀行にあるままでした。かつ、私たちのFacebookユーザーの好みにあった商品をマッチングする技術は素晴らしいものでした。そこで、解決しようとしている問題をピボットし、新たにプロダクトを作ることにしたのです。Facebookを使って商品のレコメンドをする代わりに、Facebookにパーソナライズされた広告を出すことにしました。この新しい方向性がEC店舗に響き、会社は最終的に楽天に買収されました。

プロダクトマーケットフィットを探す

プロダクトマーケットフィットを探すのは困難なことで、ほとんどの企業が失敗しています。マークアンドリーセンが2011年に書いたエッセイで、「プロダクトマーケットフィット」と言う単語が紹介されました。プロダクトマーケットフィットを達成できれば、より多くの顧客があなたのプロダクトが欲がりますし、持続可能な成長を遂げることができます。

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WHEN YOU HAVE A PRODUCT MARKET FIT, YOU KNOW IT.

 
成功している企業のほとんどは、プロダクトマーケットフィットを見つけるために、数回のピボットを実験しています。これを実現させているのは、通常1つの大きなピボットではなく、顧客やプロダクト、課題、テクノロジー、そしてグロースチャネルなどを横断する実験の積み重ねです。起業家がそれぞれのビジネスで、より効率的な方法により、これらの領域を跨ぐような実験ができるプロセスはあるのでしょうか。

グロースマーケターはすでにこれを理解しています。すばらしいグロース担当者たちは、必ずしも一番知識豊富なマーケターというわけではなく、科学者のようにマーケティングにアプローチしています。彼らは自分たちの考えがどのようにグロースをもたらすのかという仮説を持っていて (例えば、新しい広告チャンネルなど) 、それを実験し、データとその実験がうまくいったのかを見ています。 これを繰り返し行っているのです。私はみなさんにBrian Balfour氏による記事や講演、 growthhackers.comを良く読んで、グロースの実験プロセスを理解することを強くお勧めします。

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GROWTH EXPERIMENTS ARE THE TIP OF THE ICEBERG — THAT IS YOUR STARTUP.

 
しかし、グロースのための実験とは、スタートアップという氷山の一角にすぎません。起業家は、どのように違う領域のビジネスに実験のプロセスを導入でき、ピボットしてプロダクトマーケットフィットを見つけられるでしょうか。

ピボットピラミッドとは?

ピボットピラミッドを活用しましょう。ピボットピラミッドとは、起業家がグロースさせるために変化を起こしたり、違うビジネス領域で実験を行うのを視覚的に導くことで助けてくれるガイドラインのことです。投資家として、どのような質問をしスタートアップに価値を付けるのかということと良く似ています。創業者として、 同じガイドラインを用いてアイディアを思いついたり、ピボットさせることもできます。

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顧客:Customers

顧客はスタートアップの基礎でしょう。あなたが解決した課題、作り出したプロダクト、築いたテクノロジーとは、すべて誰が顧客なのか次第です。顧客を変えるピボットは可能ですが、いつやるかによってはピボットピラミッドの全てを再評価する必要がでてきます。

課題:Problem

確認済みの正しい顧客を持っていても、存在しなかったりそんなに気にされていないような課題を解決しているかもしれません。課題をピボットすることは可能ですが、ソリューションやテクノロジー、グロース戦略も再評価し変える必要があります。あなたが正しく顧客と課題を持っているのなら、マーケットも同様につかめているのです。

ソリューション:Solution

あなたの顧客にとって問題となる課題を確認してきました。さて、あなたの顧客に響く、市場にある既存のソリューションよりも良いプロダクトを作らなければいけません。ピボットピラミッドの他の変更のように、プロダクトにおける変更は定量的なグロースを目指すべきでしょう。

テクノロジー:Tech

あなたのテクノロジーはソリューションを作る上で、重要なものになります。プロダクトが顧客にとって響いていても、テクノロジーの選択次第ではグロースやリテンションを妨げかねないのです。例えば、Friendsterが主流のSNSとしての立場を保てなかった大きな理由に、需要に見合うだけのサーバーを維持できなかったということがあります。

グロース:Growth

ピボットピラミッド上の全ての変化は、グロースをもたらさなくてはなりません。しかしいくつかの実験では、プロダクトやテクノロジーへの重要な変更は必要ありません。これらの変更は、ピボットピラミッドのトップにあります。素晴らしいマーケターは、新しいグロース戦略を頻繁に実験すべきです。これらは最もグロースするチャンネルが飽和状態になったり、時間とともにコストがかかりすぎるといったことがあるため、必要になります。

それぞれのステージごとの有名なピボット事例

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ピボットピラミッドにおける重要なポイント

実験の頻度

ピラミッドの下段は頻繁に変えるべきではありません。例えば、あなたが現在解決している課題の顧客を頻繁に変えることはできません。実験のペースはピラミッドの上段になると増えます。これは特にスタートアップが成熟し、プロダクトマーケットフィットを達成したあとの話です。

顧客と課題から始める

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起業家が犯しがちな共通の失敗は、顧客が誰かしっかりと理解せずに、自分たちの持つプロダクトとテクノロジーで事業を始めてしまうことです。顧客を理解していないのであれば、何をやったとしても上手くいくことはありません。これは顧客、課題、ソリューションが固まる前に、マーケティングに注力するべきでない理由の一つです。まず、人が欲しいものを作ることが大切です。ジェット燃料を壊れたエンジンの車に入れたくはないでしょう。まずはエンジンを直しましょう。

下段でのピボットは、上段のすべてを変える

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ピボットピラミッドの下段での変更は、上段での決定に影響します。しかし最上段での変更は、必ずしも下段での変更を必要としません。

例えば、課題でピボットしたとします。するとプロダクトやテクノロジー、マーケティングチャンネルにも変更か再評価が必要になります。一方、使用するテクノロジーを変更させても、あなたの顧客はプロダクトに何か変化があったとは気づかないでしょう。同様に、新しいマーケティングチャンネルで実験しても、プロダクトやテクノロジーに変更は必要ありません。

一度に異なるタイプの顧客を持つことはできない

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創業初期のスタートアップを殺しかねない共通の間違いは、一度に異なるタイプの顧客にフォーカスすることです。ピボットピラミッドの下段で変化を起こすことは、プロダクトやテクノロジー、マーケティングのような上段での決定に影響を与えます。 複数のタイプの顧客に注力するならば、文字通り一度に複数のスタートアップが必要になります。企業として成熟し、プロダクトマーケットフィットを達成した後であれば、複数のタイプの顧客(中小企業に加えて大企業も対象とするなど)を獲得することも可能になります。

UberやAirbnbなどのマーケットプレイスはこの例外です。マーケットプレイスには最初から、売り手と買い手の二つのタイプの顧客がいます。しかしだからこそ、マーケットプレイスを作っていくことは大変なのです。 

すべての実験はグロースに繋がらなければならない

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創業者がグロースマーケターから学べる最も重要なことの一つは、実験のための科学的プロセスがあります。これはピボットピラミッドの基礎でもあります。「新しいマーケティングチャンネルを試す」や「友人紹介プログラムを実行する」といったグロースのためのピボット、「サーバーをAWSに移行する」といったテクノロジーのピボットを行う際は、グロースに貢献する計測可能な目標と、強く結びついているか確認する必要があります。ピボットにおける仮説を持ち、低コストに実験をし、結果を計測しましょう。もし実験が上手くいったのなら、実装を変えましょう。

あなたのピボットピラミッドは?

あなたにとってのピボットピラミッドはなんでしょうか?ぜひあなたのピボットの経験と、それがどのようにビジネスに影響を与えたのか教えてください。投資先の企業が経験した、上手くいったピボットの体験談を知りたければ、ぜひ500 Startupsのアカウントをフォローしてください。(日本語でも配信していきます、500 Startups Japanはこちら)また、 Selcuk氏のブログ と 彼のSNSも参考にしてください。

原文記事

Miyako Yoshizawa

慶應義塾大学看護医療学部4年。ベンチャーキャピタルや外資系証券会社の証券リサーチ部でIT市場のリサーチを経験した後、大学での専門を生かし、ヘルスケアITに注目。米国のヘルステック系スタートアップについて取り上げるサイト「HealthTech News」を2013年に立ち上げる。

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