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Founders Fundと500のパートナーが語る、日本のスタートアップの可能性

フィンランドのテックイベント、Slushのアジアイベント「Slush Asia」が今年も日本で開催されました。昨年、Slushはアジアで初めて東京お台場で開催され、テック系のイベントとしてはかなり大規模になる、約3,000名もの入場者を国内外から集め、その影響力を示しました。

2回目となる今年は、千葉の幕張メッセにて、5月13日〜14日の2日間にわたり開催されました。2日目の14日には、中央ステージにて500 Startups Japanの代表兼マネージングパートナーであるJames Riney(ジェームズ・ライニー)と、Founders FundのパートナーであるGeoff Lewis(ジェフ・レーヴィス)氏が、ベンチャー投資の今後や、日本の起業家がグローバルで戦う上で必要なことについて語りました。SpaceXPalantir Technologiesといったユニコーンへの投資実績を持つVCのパートナーが初来日したとのことで、たくさんの人が集まりました。今回は当日聞けなかった方や、再度勉強したい方に向けて、その内容をお届けします。

 

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James:Founders Fundは、SpaceXのような普通の投資家であれば投資したがらないような企業にも果敢に投資する、常識を覆してきた世界的なブランドです。そしてGeoffは、おそらくマリファナ領域に投資した、初のベンチャーキャピタリストでもあります。そこでGeoffに訊きたいのですが、投資の際に一体どのような点を見ているのでしょうか。ぜひそのプロセスを教えてください。

 

Geoff:私たちFounders Fundの唯一の投資規則は、「No rule」。ステージや業種といったことに縛られず、あらゆる業種、あらゆるステージの会社に投資します。さらに私たちが本当に見ているのは、ビジョンであるため、それぞれが大きく異なります。当然トレンドにはハマりません。Space Xのようにスペースシャトルを打ち上げるだなんてクレージーなアイディアでしたから、当然トレンドも何もないのです。とても困難なことで、創業から2度も発射に失敗し、何十億という費用をかけてきていますから、本当にクレージーと言えます。

また、ライドシェアのLyftに出資した際も同様です。Uberが巨大になる前は、ごく一部の都市だけでブラックカー(高級リムジンの配車)ビジネスを展開していました。多くの規制に関わる人々は、Lyftのようなシェアリングによる乗車サービスなんてクレイジーだと思っていました。しかしその後、トレンドはLyftのようなP2Pのライドシェアリングになったのです。 クレージーと思われるようなビジョンでも、それが成立することを示してくれれば、私たちは大歓迎というスタイルです。

 

James:なるほど。ちなみに、どのようにそうした「逆張り」を見つけてきたのですか?

 

Geoff:ピッチの際には起業家が想定や期待とは真逆の質問を投げるようにしています。例えば、バイオベンチャーがピッチに来たとしましょう。彼らが新薬の発見をしようとしていた場合、ピッチは発見に関する技術や薬学のことばかりになってきます。そこで、あえてビジネスの質問をするのです。ビジネスモデルや展開に関する戦略とかね。

これとは逆に、Airbnbみたいなコンシューマービジネスの企業のピッチの場合、彼らはマーケティングやブランドといったことに焦点を置いて語るでしょう。そこで、あえて技術としての強みを聞くのです。

起業家が得意としていることとは逆のことを聞き、あえて答えづらい質問をすることこそがまず重要です。そしてこの質問に良い回答ができるのであれば、それは良い会社である可能性が高いサインでしょう。

 

James:あなたのマリファナへの投資についてですが、それ以前からマーケットを注視していたのですか?それとも偶然出会った起業家のビジョンが素晴らしかったから投資したのでしょうか?

 

Geoff:マーケットと起業家の両方が投資の決め手です。2009年、Founder Fundで働く前に、ピーター・ティールとランチした際に、カナダにおける大きな可能性について話しました。そこで投資したいエリアとして、マリファナビジネスに着目しました。分野もレギュレーション的にも全く問題なかったのです。また、タバコやアルコールが中毒性を訴えられている一方、多くの研究がマリファナの抗がん性を肯定していました。

そんな時、多くのスタートアップが大麻関連の事業を行っていたために複雑化していた、入手ルートや用途を整理したYelp for マリファナを行うスタートアップと話す機会がありました。彼らの非常に巧妙なビジネスモデルに感心し、少ない額でしたが投資を決めたのです。

例えばライドシェアリングを例にしても言えることです。中国のDiDiやUber、Lyftなど取り巻く環境・規制は変化していきます。すべての地域で規制緩和が行われていなかったとしても、人々の需要があることはわかっていました。

 

James: 個人的に知りたいのですが、Sequoia CapitalAccel Partnersは中国やインド、そして東南アジア全体への投資を強化していますが、Founders Fundもアメリカ以外の地域への投資を考えていますか?

 

Geoff:もちろん、とても興味を持っていますよ。すでにアメリカ以外でも投資しています。アジアへの投資はまだですが、ここ日本にもとても興味があり、前向きに投資を検討しています。

アジア以外の地域にはすでに投資しています。私たちのブラジルでの最初の投資先は、人工知能の会社で、グーグルに買収されました。2011年にはイギリス、ロンドンのスタートアップにも投資していますし、スウェーデンのスタートアップSpotifyにも投資しました。このようにアメリカ以外での投資も積極的に行っています。

特に私たちが力を入れたい地域は、他のVCがまだ見ていないところです。例えば、中国はアメリカのVCがたくさん見ているうえ、独特なマーケットを理解するには大変な労力を要します。

アジアで私たちが興味を持っているのは、日本です。ローカルのVCが多いですし、言語の壁があるためシリコンバレーのVCがあまり来ておらず、とても面白いと思っています。つまりここ日本はチャンスが多く、競合が少ないのです。

他の東南アジアは期待できるものがあまり大きくない割に、多くのVCが注目し過ぎていると思います。逆張りで言えば、ブラジルが興味深いです。経済危機を迎えようとしていたブラジルでは、多くの投資家が手を引こうとしていたにもかかわらず、あえてNubankというフィンテックスタートアップに投資しました。

 

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James:日本のスタートアップシーンは、海外からブラックボックスとして認識されがちです。日本の起業家がよりグローバルに注目されるには何すべきでしょうか?

 

Geoff:日本の起業家が世界から注目してもらうのは、とても大変なことでしょうね。ただ日本はIPO時の時価総額の形式基準が約1,000万ドルと他の国と比べて基準が低く、上場しやすいという特徴があります。IPOすることで、海外からの注目を高めるハードルが低くなるため、ユニークなベネフィットだと言えます。

しかし、それと同時に困難でもあります。なぜなら一度上場してしまうと、継続的に資金調達をすることは困難になってしまうからです。上場すると、マスに向けたアプローチをしなくてはいけなかったり、IRなど面倒なことに労力を割かなければいけません。

日本の起業家が取り組むべきことは1つで、事業が大きくなるまではなるべく長く未上場でいることも検討することです。海外からの注目は少なくなってしまいますが、そもそも投資家の注目を集めるようなことはするべきではないと私は考えています。起業家がすべきことは、まず事業に専念することでしょう。

 

James:そうですね、日本の独特な点として、とにかくIPOが多いということがあります。シリコンバレーのスタートアップのエグジットの80%がM&Aで20%がIPOなのに対し、 日本は80%がIPOで20%がM&Aです。私自身が自分の会社を売るということが初めて選択肢になりうると知った時、驚くほど買収に関する情報がないことに気づきました。それに対し、Geoffは売却のプロセスについて丁寧に説明してくれましたよね。今回このピッチを聞いている人の中には、同じような状況の人もいるはずです。会社を売却したいと思った時に、考えるべきことを教えてくれますか?

 

Geoff:もちろんです。企業を売却する際に重要なのは、エンパシーでしょう。あなたは、買い手が求める事業のポテンシャルに共感しなくてはいけません。

企業が他の会社を買収するのには、それぞれ3つの理由があります。まず1つ目は、ある領域における教師やお手本を獲得するという戦略的な買収です。FacebookWhatsAppを買収したのは、まさしくこの目的です。WhatsAppはとても大きなメッセージングプラットフォームで、Facebookは自分たちのMessengerアプリをより大きなものにしたいと考えていました。つまり買収先がどのような戦略を持っているのか注視すべきだということです。

2つ目は技術の獲得という目的です。GoogleのDeepMind買収がこれに当たります。Googleは、買収によりDeepMindの持つ世界最高峰の技術を獲得できるので、5億ドルという高額を出すことができたのです。

3つ目は、人材獲得のための買収です。優秀な人材の獲得を目的としています。

より高額で売却をするには、他の会社がやっていないことができるポテンシャルカンパニーだときちんとピッチして、マーケティングする必要があります。他の買収しそうな企業がどういう戦略を持っているのかエンパシーを持ち、それぞれに合わせたピッチにするべきでしょう。

 

James:GeoffもTopguestを創業2年以内に売却していましたが、そのタイミングはどのように図ったのですか?

 

Geoff:まあもうオフィスで夜を明かす日々にはこりごりだったからです(笑)というのは冗談で、売却の形式によってその時期は変わるでしょう。しかしその中でもあえて言うならば、ベストな売却とはまだ会社を売りたくないと思うタイミングです。ここできちんと交渉し、最高額での売却となるようすべきですし、買収する企業もこの時ならより高い金額を提示してくれるでしょう。

売却したいと思った時には、売却への取り組みをすぐに始めなければいけません。それまで取り組んでいなければかなり大変な思いをしなければ売れないでしょう。戦略的なアドバイザーを持って指示を仰いだり、買収先候補との意見交換をしたりするのが良いでしょう。ただ、会社を売りたがっているという姿勢を悟られないように配慮するべきです。

 

James:日本のスタートアップの特徴として、株主構成の多くがCEOのものになっていることがあります。他の創業者やCEOに次ぐポジションの人にあまり株が分けられていないのです。シリコンバレーにおける株の分配の仕方について教えてください。

 

Geoff:シリコンバレーでは、創業初期のチームメンバーに株を分けることが重要です。なぜなら、創業初期はそれぞれの人材に見合った十分な給与を払う資金がないため、株を分けるのです。しかし一概に言えるものでもなく、それぞれのビジネスによって重視するのが株なのか給与なのかは変わるでしょう。例えば、ハイリスクでかつかなりコミットをしなければならないビジネスであれば、入ってくれた人には株を多めに、給与を減らすべきでしょう。

 

James:昨日会った起業家に相談されたことなのですが、VCを選ぶ際にはSequoia CapitalのようなハンズオンのVCにすべきなのか、Founders Fundのようなハンズオフの方がいいのか教えて下さい。

Geoff:Sequoia Capitalはとても素晴らしいVCですが、VCを選ぶ際に、Sequoia CapitalのようなハンズオンのVCと、Founders FundのVCがいいのか、それぞれの起業家ごとに違いますよね。Sequoia CapitalやAndreessen HorowitzのようなVCの姿勢は「何が何でも勝つ」ことで、CEOを解雇することも厭いません。一方で、私たちは一度投資した会社に関しては絶対に見捨てません。たとえ起業家と意見が異なっても、起業家の方を尊重します。

Sequoia CapitalやAndreessen Horowitzでは、戦略の他にエグゼキューションにあたっても積極的な支援を行います。Founders Fundでは、戦略にフォーカスし、エグゼキューションはチームが行えるようにサポートします。

 

James:日本に来るのは今回が初めてですか?

 

Geoff :初めてです。ずっと来たいと思っていたので、今回呼んでもらえてとても嬉しいです。

 

James:日本で驚いたことはありましたか?

 

Geoff:日本とアメリカは地理的に遠いだけではなく、文化という点においても大きく異なりますね。人々の道での歩きかたといったことだけでも、アメリカとは全然違うんですよ。昨日は2時間ほど渋谷や銀座を歩いていたんですが、ほとんどの人が同じような服を着ていたり、前の人に続いて歩いていたり、赤信号ではしっかり止まっていたりと・・・アメリカとは全然違うことに驚きました。

同じ方向へ向かっていく人々を見ながら、このようにみんなが皆同じような行動を取っている国でスタートアップを始めることは、アメリカ以上に勇気や覚悟が必要なんだと思いました。街中の様子からも、日本の起業家の勇気を知ることができたのです。

 

James:今回はお話を聞かせてくれてありがとうございます。日本での残りの滞在を楽しんでください。

 

Miyako Yoshizawa

慶應義塾大学看護医療学部4年。ベンチャーキャピタルや外資系証券会社の証券リサーチ部でIT市場のリサーチを経験した後、大学での専門を生かし、ヘルスケアITに注目。米国のヘルステック系スタートアップについて取り上げるサイト「HealthTech News」を2013年に立ち上げる。

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