SocialTools

たった5ヶ月で170カ国へ拡大した、ユーザー獲得の秘策

500 Startupsはこれまでにグロースに成功した会社をケーススタディとして取り上げ、みなさんのお役に立てるよう紹介してきました。今回はブエノスアイレスのSocial Toolsという、ソーシャルマーケティング支援を行うスタートアップの創業者 Lucas Emma氏にお話を伺いました。Social Toolsは500 Startupsが開催する、ラテンアメリカなどのポストシードやプレシリーズAのスタートアップを対象としたグロースプログラム、500 Miami Distro programの参加企業の1社です。


私たちはアルゼンチンのコルドバという街の、廃墟のガレージでSocial Toolsを立ち上げました。今では世界170か国の200万のマーケターを支援するマーケティングツールですが、その始まりはひっそりとしたものでした。過去3年で、Social Toolsはラテンアメリカ全体のソーシャルメディアマーケティングを率いるようになり、顧客は30カ国にまたがるようになりました。

私たちにとっては、これではまだまだ満足できません。しかし、ラテンアメリカで素晴らしい結果を出し、どんなに困難があろうと構わなかったにもかかわらず、他の国や地域の市場を破壊することはできないようでした。ラテンアメリカから外へ進出することは不可能に思えたのです。アメリカの顧客獲得コストは私たちのLTVの3倍にもなりました。そのため、顧客を獲得するためには、顧客から得られる収益以上のコストをかける以外なかったのです。

ある日私たちは、Postcronというサービスを提供しているオランダのチームと会いました。Postcronとは、ユーザーがあらゆるSNSでそれぞれ投稿する時間を設定できるという、使いやすいサービスです。彼らはヨーロッパに拠点があるにもかかわらず、全世界にユーザーを持っていました。

その当時のPostcronはそれほど多くの収益を得ていませんでした。彼らのユーザーあたりの月のアベレージチケット(売上1回あたりの平均売上金額)は7ドルで、それはSocialToolsのARPU(ユーザーひとりあたりの平均売上金額)の10分1以下でした。

Postcron_SocialTools_ARPU

加えて、彼らのサイトはまるで90年代のような見た目でした。しかし彼らには、20,000人以上もの熱狂的なユーザーがいたのです。Googleで検索してみると、数千もの高評価のレビューがついています。

Postcron_reviews

それを見て、私たちは、Postcronが10億ドルを稼ぐような巨大企業ではありませんが、素晴らしい可能性を持っていると気づきました。

そして、私たちは、残りの資金をマーケティングに費やすのではなく、Postcronを買収することに使うと決めました。かなり突飛なアイディアであり、当時の投資家や顧問を説得するのはかなり大変でした。

私たちの国では成長しているスタートアップでも、常に新たな資金調達を模索していたり、せいぜい買収によるエグジットを目指しているという程度です。ラテンアメリカでは、新しい会社を買収するなんて考えるスタートアップはいません。(訳注:これは日本でも同様でしょう。)

しかし投資家へこの買収計画をプレゼンした後、投資家たちは考えなおし、この買収取引はまとまりました。

買収後、まず新しい顧客からの問い合わせ内容(チケット)を読み、答えることに数日間を費やしました。顧客のカルチャーを知ることができたり、なぜPostcronを大好きなのか理解できたりと、顧客から学ぶことができました。(編注: 開発サイドもビジネスサイドも、すべての人が最低でも数日間かけて、定期的にユーザーのチケットを読んだり返信するべきです。) 

しかし、わずか数ヶ月でユーザーを500%成長させた秘策を見つける以前は、ある重要な間違いを犯していました。

最初の失敗、クロスセル

まず思いついたことは、Postcronの販売の際に関連商品としてSocialToolsを販売することです。逆も同様にSocialToolsの販売からPostcronも販売するのです。

Postcronのユーザーに対し、SocialToolsのサブスクリプション会員になるつもりがあるかアンケートを実施したところ、その83%がSocialToolsの機能を望んでいることがわかりました。この時私たちはツイてると思いました。140ドルもするSocialToolsのサブスクリプションに入ってくれるのがPostcronユーザーの10%だけだとしても、新たに2,000もの顧客を得ることができ、数ヶ月で50万ドルをすんなりと稼ぐことができます。

しかしこれは簡単なことではありませんでした。PostcronのユーザーはPostcronの20倍ものお金を出したがらなかったのです。

 

顧客の口コミ

最初の失敗の後、私たちは、自分たちの新たなコミュニティについてもっと理解するべきだと気付きました。

私たちのユーザーの多くが自社の製品を宣伝するブログや、YouTube動画、ツイートといったコンテンツをつくっていていたことに気づいたのです。ユーザーはインフルエンサーのコミュニティマネージャーが多いのは聞かれなくても明らかでした。

そのとき求められたのは、この影響を増やす方法だったのです。

次に、登録後の90日間の無料サービスを受けるユーザーを観察したところ、こういったユーザーは大抵有料課金はしないことがわかりました。課金はしないが、明らかにPostcronを使いたいと思っているようでした。そこで私たちはこういったユーザーにコンタクトをとり、YouTubeの商品紹介にちょっとした口コミを書いてくれたら無料で6ヶ月間プレミアムプランが使えますと話しました。すると多くのユーザーは快諾してくれました。(さらに多くの人が、私たちのプロダクトについて非常に長いブログを書いてくれました。)

blogpost

私たちのサイトが英語・スペイン語・ポルトガルにしか対応していなかったにもかかわらず、ユーザーのレビューは様々な言語で書かれるようになりました。この経験は私たちが会社をやってきた中でも、最も有効なマーケティング戦略となりました。

Postcron周辺の口コミにより、30カ国15万アカウントだった私たちのユーザーは、5ヶ月後には170カ国200万アカウントにまで急成長しました。これにより取扱高は二倍になり、 6ヶ月前には多額の資金がなければ参入することが不可能と思っていた、多くの国や地域の市場へ拡大することができたのです。

Postcron買収前のデイリーアクティブユーザー

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Postcron買収後のデイリーアクティブユーザー

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なぜ成功したのか

私たちは将来サムスンやトヨタ、ナイキといった企業へ成長する期待がよせられる、Fortune500に選ばれた企業を沢山顧客としてかかえています。しかしそれと同時に数千もの中小企業やフリーランスのコミュニティマネージャー(多くは自営業の家庭)、direct sales consultant(SNSで手作りの品を販売する主婦など)といった人も顧客にいます。

いずれにしろ全員がプロモーションを実施していて、SNSとコンテンツのスケジュールを組む必要があります。しかし、彼らが私たちのサービスを使う理由や、どのくらい予算があるかはそれぞれまったく違います。

ナショナルブランドのような大企業はエンゲージメントを重視している一方で、中小企業は彼らの顧客メールリストを展開させていと考えています。また、個人によるECサイトなどはウェブページへのトラフィックを増やすことを目指しています。中にはこれらすべてを目指すマーケターもいます。こういった例は他にもいくらでも挙げられうます。

“マーケティングの達人たち”はペルソナを立てる際には、1つか最低でも2つにするようしばしば薦めています。これは、6つもの異なるターゲットを狙っていて、どちらか1つに絞ると成立しない私たちにとっては不可能でした。

その代わり、すでに顧客が自然に行っていることを増幅することで、顧客が私たちのブランドについて語ることを認め、インセンティブを与えることに決めたのです。

もしあなたが素晴らしいプロダクトを持っているのなら、そのプロダクトに満足しているあなたの顧客以上にそのプロダクトを売るのが上手い人はいないはずなのです。

原文記事

著者について

Lucas Emma(ルーカス・エマ)

LucasEmma

SocialTools.meの創業者で、CEOを務めています。幼いことからアルゼンチンで起業家として活躍し、インターネットや機械に興味を持っています。

Angellist: Lucas Emma

LinkedIn: Lucas Emma

 

Miyako Yoshizawa

慶應義塾大学看護医療学部4年。ベンチャーキャピタルや外資系証券会社の証券リサーチ部でIT市場のリサーチを経験した後、大学での専門を生かし、ヘルスケアITに注目。米国のヘルステック系スタートアップについて取り上げるサイト「HealthTech News」を2013年に立ち上げる。

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