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トランプ氏は今も昔もただの政治家

アメリカ大統領選挙の前夜、500 Startups Japanのイベントに登壇していた私は、「もしトランプ氏が当選した場合、すべてのアメリカ人に代わって心よりお詫び申し上げます」と冗談半分で言いました。まさか、何気なく発した自分の言葉が、アメリカ史上最大の意外な展開を暗示していたとは、まったく気付いていませんでした。

自分を含め多くの人々は、未だに事態を消化しきれていません。ドナルド・トランプ氏のような人間がなぜ選ばれてしまったのか?これは夢か。いや悪夢か。とても現実とは思えません。

しかし、これが現実であり、テクノロジー業界でこれを予見していた人はほとんどいませんでした。私たちは全員ショックを受けています。中には、カリフォルニア州をアメリカから離脱させよう、と呼びかける者さえいます。私たち500 Startupsのデイブ・マクルーア(Dave McClure)も、ポルトガルで行われていたWeb Summitカンファレンスのステージ上で、「sh*t」や「f**k」…と言いながら懸念を示していました。これは多くの人にとって受け入れ難い事実なのです。Brexitを笑っていたはずの私たちアメリカが、今度は世界中から笑われているのです。

今回の選挙結果がとりわけ残念であったのは、ヒラリー・クリントン氏が、得票数で上回っていたにもかかわらず、選挙人団の票数で負けてしまったことです。ジョージ・タケイ(George Takei)氏がツイートしているように、「ヒラリーを選出したのは国民、ドナルドを選出したのは選挙システム」だったのです。

 

では、このシステムによってトランプ大統領が誕生した以上、私たちはこれをどう解釈すればよいのでしょうか?

私としては、トランプ氏に文字通り「ただの政治家」であって欲しいと思っています。彼は、虚無感を感じていた一部のアメリカ人に訴えかける術を熟知した上で、選挙システムを巧妙にハックしたのです。彼らが恐れていたものを正確に把握した上で、その恐怖をうまく利用したのです。中国やメキシコは私たちの職を奪っている、ISはアメリカを破壊するに違いない、クリントンは体制側を代表しているに過ぎない、政府なんてクソ食らえ等々。トランプ氏は、こうした糸を操れば、多数のアメリカ人有権者に支持されるであろうことを知っていたのです。

ただ、ひとつ確かなのは、トランプ氏は他の多くの政治家同様に、まったく相反する発言をしていることです。イラク侵攻に賛成だと言いながら、後にその発言を撤回し、中絶賛成派だと言いながら、後にそれを撤回する、国民皆保険に賛成だと言いながら、後からそれを撤回する等々。トランプ氏は目標を達成するためであれば、いつでも方針を変更するし、今回はそのゴールがたまたま大統領だったのです。

クリントン氏に票を投じた有権者59,755,284人と同様に、私も選挙結果に動揺し、先行きに不安を感じています。これはトランプ氏の悪ふざけに過ぎないと信じたいし、選挙に勝利するために掲げたデタラメな公約の90%を実施しないで欲しい、とも思っています。

逆張り投資家としてのビジネススタイルと同様に、終始一貫してトランプ氏支持を続けた数少ないシリコンバレーの人物がピーター・ティール(Peter Thiel)氏でした。彼は選挙前のインタビューでこのように発言しています 。「ひとつ明確にすべきことがあるとすれば、それはメディアがいつもトランプ氏の発言を文字通りにしか受け取っていない、ということです。真剣に受け止めずに、いつも文字通りにしか受け取っていないのです。トランプ氏に投票した多くの有権者の中で、彼の発言を真剣に受け止めており、文字通りに解釈している人はいないと思います。」ピーター・ティール氏の発言が正しいことを願うばかりです。


ドナルド・トランプ氏が大統領になったら、シリコンバレーはどうなるのか?トランプ氏の公約からスタートアップエコシステムに与える影響をまとめました。こちらをご覧ください。

 

James Riney

Managing Partner & Head, 500 Startups Japan

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