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500 Japanが掲げる、2つの目標(パート2)

前回の投稿で、 500 Startups Japanが達成したいことのうちの一つである、クロスボーダーM&Aを増やすことについて書きました。今回はもう一つの目標である、日本から「真のグローバル企業」を生み出すために、私たちがどんな貢献をできるのかについて書きたいと思います。

「真のグローバル企業」と言ってもそれだけでは曖昧なので、まずその定義を明確にしましょう。まず、これは単に社内公用語が英語ということではありません(とはいえそれも確かに役には立ちますが。)「真のグローバル企業」とは、自国以外のユーザーや売上高の割合によって決まるはずです。とはいえ、正確に何パーセント以上であれば「グローバル」なのかは明確ではありません。例えば、 Google (現 Alphabet)Facebook は共に売上高の50%以上を米国外から得ており、間違いなく真のグローバル企業といえるでしょう。しかしこの基準ではあまりにもハードルが高すぎるかもしれません。 もう少しリーズナブルな目標として、海外売上高比率30%以上をひとつの目安とすることにしましょう。

「真のグローバル企業」と言うのならば、企業の規模についても言及する必要があります。トヨタやソニー、パナソニックが「真のグローバル企業」でないと言う人はほぼいないでしょう。彼らは共通して圧倒的な規模があります。売上高の30%以上が海外からのものであったとしても、注目に値するほどの十分な規模の価値を創出していないのならば、真のグローバル企業と呼ぶには十分ではありません。これらの企業はいずれも時価総額で数兆円を超えています。将来の目標として日本のスタートアップはこのレベルまで目指すべきです。しかし「真のグローバル企業」と呼ばれるための入り口として、まずは「ユニコーン」であるバリュエーション10億ドル(約1,000億円)を目指すのが良いスタートだと思います。

真のグローバル企業とは: 10億ドル以上のバリュエーションがつき、売上高やユーザーの30%以上が国外からのものである企業

真のグローバル企業は、このところ長い間、日本から出てきていません。トヨタやソニー、パナソニックはこの基準に全て当てはまっていますが、彼らは過去の黄金世代の代表格です。 その時代から長い年月が経ってしまったことは事実ですが、同じように偉大な企業を再び創出することができないという理由はどこにもありません。実際、すでにメルカリやサイバーダインのような、次の世代の偉大な企業が生まれつつあります。変えなければいけないことは、国内にとどまらない大きな志と、実際にグローバルになるために必要な要素を新たに理解することです。

真のグローバル企業になるためには、お金が必要です。新しい市場へ危険を冒して挑戦するためには巨額の資金を必要としますし、スタートアップが10年以内に数十億ドル(数千億円)規模にまで拡大する今のような時代では、スピードこそが勝負の要となります。これこそが、UberやAirbnbのような企業が、猛烈なスピードで何十億ドルも調達している理由です。しかし、国内のベンチャー投資額は、近年急速に増えつつはあるものの、年間で約12億ドル(約1,200億円)にとどまります。日本のスタートアップは、世界のスタートアップと比較すれば、常に資本が不足しているとさえ言えます。どうすれば世界的な規模で競い合えるのでしょうか。

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日本でもここ数年で、調達の選択肢が増えているにも関わらず、グロースキャピタルは未だに十分ではありません。これこそが、日本のIPOはシリーズBだと揶揄される理由でしょう。もし数十億円を調達したいなら、株式を公開し、その後の市場での調達に頼る必要があります。(これも実際は非常に難しいのですが。)メルカリやソラコム、スマートニュース、ビズリーチといった企業は、最近数十億円規模の調達を行っており、環境は変化しつつあることを示しています。しかし、 日本のM&A EXITの環境の改善と同じく、変化のスピードは十分に速いとは言えません。

このペースを加速するために、私たちは海外のVCとの架け橋となり、彼らを日本に呼びこむつもりです。ベンチャーキャピタルの仕事とは、つながりのビジネスと言えます。500 Startupsのネットワークにより、私たちは世界中の投資家と密接な関係を持っています。このチャネルを活用することで、私たちの投資先のスタートアップが、世界で戦うために必要な資金を調達することに貢献できるのではないかと考えています。

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そしていつか、SequoiaやFounders Fund、Andreessen HorowitzのようなトップティアのVCたちが、500 Startups Japanの投資先に投資するようにできれば、日本への注目はよりいっそう増えると信じています。より多くの注目は、より多くの投資へと繋がります。ちなみに、これが5月にFounders FundのGeoffパートナーを日本に招いた理由の一つでもありました。彼らが日本のスタートアップに投資するかはまだ分かりませんが、私たちがこうした地道な努力を続けていくことで、少しずつ世界のトップVCたちの視界に日本のスタートアップを写し出していけるはずです。

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Founders FundのGeoff Lewisに日本の起業家を紹介。 (左から、 MOLCUREのYoichiro Haraさん、Axelspaceの Yuya Nakamuraさん、 AgICのShinya Shimizuさん、500のYohei Sawayama、Founders Fundの Geoff Lewisさん、500の James Riney)

 

海外に拡大する際に必要なことは、お金だけではありません。現地のネットワークも非常に重要です。誰がキーパーソンであるかを知るだけではなく、実際にそのマーケットで何かを成し遂げた「誰か」に、しっかりとした紹介をしてもらうことが必要です。ビジネスパートナーとして繋がるとしても、マーケットについて教わるにしても、良い人材を雇うにしても、ネットワークは重要です。私たち500 Startupsは世界中に120名以上ものスタッフがいて、60カ国1,500社以上のスタートアップに投資しています。あなたが世界のどこに展開するにしても、私たち500 Familyにはきっと、皆さんの力になれる「誰か」がいるはずです。

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英語の重要性について触れずに、グローバル企業を生み出すことをテーマにしたこの記事を終えることはできません。それが正しいかどうかはともかく、英語はすでにビジネスの世界における交際共通語です。しかし、日本の英語力は常にアジアの中でも下位にとどまります。これがグローバル企業を作る上での大きなハンディキャップであることは否定できません。残念ながら、私たちは英語教師ではないため、これについてできることは多くはありません。

しかし、日本は「ソフトパワー(ポップカルチャー、アニメ、マンガ、伝統文化、和食など、その国の魅力)」をもっと活用することで、この問題をある程度解決することができるのではないかと私たちは考えています。日本を愛し、住みたいと考えている人は世界中にたくさんいます。事実、シリコンバレーと比べたら半分の給与になることを甘受してでも日本で働くことを選ぶ人たちが存在します。日本のスタートアップはこのアドバンテージを活用するべきです。もし真剣にグローバル企業を作ろうと考えているのなら、グローバルな人材の採用を目指しましょう。500 Startupsのリーチやブランド力は、日本で働きたいと思っている優秀な人材を海外から採用する際にも手助けになれるはずです。


 

日本の国内市場は十分に大きいため、海外展開を目指す必要がないのだという意見も、私たちは時たま耳にします。確かに、国内だけで展開する企業でも有意義な規模になれるほど日本市場は十分に大きいと思いますし、私たちもVCとしてそうしたスタートアップにも投資はしていきます。日本固有の課題を解決するスタートアップにも、素晴らしい価値はあるからです。
しかし、過去には日本企業が世界経済の圧倒的な脅威であった時代もありました。同じことを再びできないはずはありません。この高いハードルをものともせず、「真のグローバル企業」を創りたいと真剣に考えている起業家は、ぜひ私たち500 Startupsに声をかけてください。必ずや私たちの支援が役に立つはずです。

James Riney

Managing Partner & Head, 500 Startups Japan

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