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ベンチャー・キャピタルのジレンマ:短期のKPIと長期のKPI

起業家の方々は、(独立系の)ベンチャーキャピタルもスタートアップと同様に資金調達をしなければならないのだということを知らなかったり、忘れてしまっているかもしれません。繰り返し断られる気持ちを、実は私たちも体験しています。資金調達は容易ではありません!なぜ分かるのかというと、私たちも2、3年毎に新規ファンドの資金調達をしなければならいからです。

ベンチャーキャピタルの場合、1号ファンドはシードラウンド、2号ファンドはシリーズA、3号ファンドはシリーズB(以降続く)、と考えてください。そして毎回のファンド組成時にはトラクションを示し、資金調達を行った後には、良いKPIを達成しなければならないのは、起業家と同じです。ただし、ベンチャーキャピタルの場合、短期に設定するKPIと長期に設定するKPIが大きく異なることが難しい点です。

短期で重要視されるのはマークアップです。マークアップとは、最初に投資を行った後、次のラウンドで別の投資家がより高いバリュエーションで出資を行った際に、新しいバリュエーションに基いて出資した株式の評価額を切り上げることです。しかし、保有株式の評価額は上がっていますが、実際はLP投資家に投資リターンを還元できているわけではないので、これを「含み益/ペーパーゲイン」と呼びます。つまり、価値は書類上でしか上昇していないのです。LP投資家に投資リターンを実際に分配するには、EXIT(買収か上場)が起きなければなりません。とは言え、一般にEXITには時間がかかります。特に価値の高い会社は、何らかのEXITイベントが起こるまでに通常7年から12年かかるものです。

ベンチャーキャピタルにとって難しいのは、通常2−3年かけて集めた資金の投資を完了した後、LP投資家に投資リターンを実際に分配するに、次のファンドの資金調達を行わなければならない点です。つまり、2号ファンドの資金調達の際に、私たちはマークアップまたは含み益に基づいて評価されざるを得ないのです。

そこでジレンマとなるのが、高いバリュエーションで速やかに次の資金調達ができそうなトレンドに乗ったセクシーな会社に出資すべきか、それとも、一見セクシーではないが長期的に見るとむしろ優良であり成長可能性の高い事業を擁している会社に出資をすべきなのか、です。事情を知らない人であれば、答えは自明かもしれませんが、ベンチャーキャピタルにとっては、とても切実なジレンマなのです。

ベンチャーキャピタル業界で集団心理がはたらきがちな理由、そして投資家が「ブロックチェーン」、「AI」や「バーチャルリアリティ」などのバズワードに群がる理由はここにあります。また、元Google社員やスタンフォード卒業生であれば簡単に資金調達できてしまうのも、これで説明がつきます。たとえ、あなたがうわべに惑わされない堅実な投資家であっても、こうしたものがマークアップの理由になり得ることを承知しておかなければなりません。

他のベンチャーキャピタルと同じように、私たち500 Japanもこのジレンマに悩まされはします。しかし、私たちは実際の金銭的リターンを伴う長期のKPIにこそ本当に意味があると考え、長期的な視点を重視します。真にインパクトのある会社を創り上げるのには時間がかかるものです。ベンチャーキャピタルビジネスは、ゆっくりと長い時間をかけて利益を作っていくビジネスです。私たちはじっくりと投資先が成長する姿を見守っていきたいと思っています。

James Riney

Managing Partner & Head, 500 Startups Japan

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