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創業初期のSaaSスタートアップが販売代理店を検討する際に考慮すべきこと

こんにちは、500 Startups Japanの吉澤です。

ある時、SaaS事業向けに販売代理プログラムを提供している方から、500 Japanの投資先に販売代行のご提案できないかというお話をいただきました。

確かに販売代理店を創業初期から利用することで、早期に顧客を獲得できるかもしれません。しかし、私は「そもそも、創業初期のスタートアップが販売代理店を使う必要はあるのだろうか。使った場合に、どのようなことが考えられるのだろうか」と違和感を感じました。500 Japanチーム内と投資先のSaaS起業家に相談したところ、私たちは以下のようなリスクがあると考えました。

  • チャーンの増加:顧客とのコミュニケーション不足や、販路の急拡大による非ターゲットユーザーの早期獲得等で、チャーンレートが高くなる恐れがある。
  • プロダクトマーケットフィットへの悪影響:直接コミュニケーションを取れないことで、顧客が何を求めてるか正確に把握できない。
  • 社内営業リソースのノウハウ不足:社内の営業ノウハウを蓄積できない。
  • 代理店への依存:顧客獲得の多くを代理店に依存することでパワーバランスが崩れ、契約面で不利になる恐れがある。

今回は上記の、アーリーステージのSaaSスタートアップが販売代理店を利用する際のリスクの考え方について少し詳しくご紹介したいと思います。

販売代理店を利用する上でのリスク

創業初期のSaaSスタートアップは、以下の2つのリスクを踏まえた上で、販売代理店を利用するか検討すべきだと思います。

顧客とのコミュニケーションの観点
SaaSは売り切りビジネスとは異なり、導入後も継続してサービスを利用してもらうことが成功の鍵となります。そのため、SaaSの営業は以下のことを意識する必要があります。

  • オンボーディングをしっかりと行い、サービスを活用してもらえるよう導き、利用を継続してもらう
  • 特にプロダクトマーケットフィット以前の場合、顧客の声を拾い上げ、サービスの方向性の決定や改善につなげる

しかし、「プロダクトを売る」ことで収益をあげる販売代理店では、売ったあとのコミュニケーションに関しては重要ではないため、上記をきちんと行うのは難しいと考えていいでしょう。

また、似たような問題が「売り先がコアのターゲットユーザーか否か」という文脈でも生じる恐れがあります。幅広い販路や強い営業力を持つ代理店に頼むことで、本来のターゲットユーザーではない顧客層に早期にリーチできてしまいます。当然ターゲットユーザーでない顧客は、満足してサービスを使う可能性が低く、早期にチャーンしてしまう恐れがあります。その場合、「イケていないサービス」と評されるレピュテーションリスクもあるかもしれません。これは代理店を使う使わないに限らず、気をつける必要があります。しかし、代理店だと自社のように売り先の選定のコントロールが効きづらい可能性が高いでしょう。

また、プロダクトマーケットフィットが固まっていない段階だった場合、そのフィードバックを参考にするとプロダクトの方向性が振れ、適切に検証できないリスクも考えられます。

ノウハウの蓄積とパワーバランスの観点
また、根本的な問題として、自分たちのプロダクトの営業ノウハウを社内で持たぬまま代理店に任せてしまうことは、社内でいつまでたっても営業チームを持てなくなるリスクがあります。

代表のJamesにも意見を聞いたところ、ノウハウだけでなく、「力関係」という意味でも外部リソースに頼るリスクについて挙げていました。代理店に早期から頼ってしまうと、顧客獲得の多くを外部に依存してしまう恐れがあります。依存してしまうことにより、代理店契約などの交渉の際に強い力関係で望めず、取引の条件(手数料の比率)などにマイナスの影響が出ると指摘していました。その一方で、まずは先に自社で営業のノウハウをもち、実績を積んだ後に代理店と話す場合には、より優位な立場で話ができるのではないかとのことです。

販売代理店を利用すると得られるメリット

上記のようなリスクがあるとはいえ、当然代理店を利用して顧客を獲得するメリットもあります。

特定の事業領域で展開しているようなバーティカルSaaSの場合、ニーズがあったとしても、その領域がレガシーな領域であるために初期の顧客を獲得するのが困難といったこともあるかもしれません。初期の顧客が全くいない状態で進めるよりは、その領域に強い代理店やパートナー企業などを活用したほうが、検証段階のプロダクトでも使って適切なフィードバックをくれる顧客を獲得することにつながるかもしれません。

販売代理店を利用する際に注意すべきこと

代理店やパートナーシップを活用する際には、なるべく前述のリスクを軽減できるよう、気をつけることも大事だと思います。

代理店やパートナー側のインセンティブを考える
営業代理店側へ売り切りに対する手数料のモデルとなると、前述の通りチャーンのリスクは高まります。一方でパートナー企業が金銭的インセンティブではなく、別の理由でリードを紹介してくれる場合には、良質な顧客候補に繋いでくれる可能性もあるでしょう。ミスマッチな顧客への無理な売り込みをおこなわせないような、代理店・パートナー企業のインセンティブ設計であるか、なぜ彼らが顧客を紹介してくれるのかを考えるのが重要でしょう。

任せる範囲の明確化
リードの獲得までは外部リソースに頼んだとしても、そのあとのコミュニケーションに関しては任せきりにするのではなく、早期から社内の人員も参画し、積極的に関わることは重要だと考えられます。

プロダクトの状況の把握
自社のプロダクトがどのような状況にあるのかということも正しく把握する必要があります。プロダクトマーケットフィットが見えていて、顧客層を拡大してもいいフェーズであるとある程度確信できていればリスクは軽減できると考えられます。

いずれにせよ、短期的な売り上げのために代理店やパートナーシップの話に食いつくのではなく、メリットデメリットを把握した上で本当に必要なのか検討することが重要だと考えています。500 Startupsとして、なにかご質問や個別のご相談の際はお気軽に、コメントや問い合わせフォームからご連絡ください!

吉澤美弥子

慶應義塾大学看護医療学部卒業。在学中に海外のヘルステック企業やデジタルヘルス企業に関して取り上げる、HealthTechNewsを立ち上げ、2016年売却。外資系証券会社の株式リサーチ部で、TMT市場に関わる調査アシスタントなどを経て、500 Startups Japanに参画。

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