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グローバル企業を目指す日本企業が、多国籍・多文化なチームを作る方法

500 Startups Japanでは、創業初期からグローバルを目指す「Born Global(生まれながらのグローバル)」な日本発のスタートアップを支援したいと考えています。これまでに、500 Startups全体としては60カ国・1900社以上の企業に投資を行なっており、その実績やネットワークを活かしグローバルを目指す日本の起業家に価値を提供できるのではないかと模索してきました。

3月6日には、グローバルを目指す日本の投資先を支援するため、投資先とバイリンガル及び外国人の優秀な人材のマッチングイベント「Bilinguals & Gaijins In Startups」を開催しました。このアイディアはもともと、JamesとMamiが、散歩でブレストしているときに思い付いたもので、その場ですぐにやってみようということになりました。私たちは100名ぐらい集まれば良いほうだと考えていましたが、結局400名ものグローバル人材の方にお申込みいただき、早々に応募を締切らせて頂いたほどの大反響をいただき、非常に驚きました。まさしくJamesやMamiのようなグローバル人材だからこそ思いつき、Disrupting JapanやJustaと協力することで実行できたイベントだと実感しています。

パートナーとして協力してくださったDisrupting JapanのPodcastでは、今回のイベントのセッションが配信され、多くの外国人に日本のスタートアップについて届けられました(上のポッドキャストから聴くことができます)。今回500 Startups Japanでは、当日の様子をより多くの日本の方に知っていただきたいと思い、日本語でイベント当日のパネルセッションの様子をご紹介します。

日本のスタートアップが、多国籍・多文化なチームを採用しマネジメントする方法

登壇者手前よりジョーダン・フィッシャー氏(株式会社Zehitomo CEO兼共同創業者 )、倉原直美氏(株式会社インフォステラ 代表取締役社長)、阪根信一氏(セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社 代表取締役社長)、ティム・ロメオ氏(Disrupting Japan Podcast ホスト)

ティム:会社(またはチーム)の公用語は何ですか?会社(またはチーム)で使う言語を統一していますか?それとも話しやすい言語を話すようスタッフに促していますか?最初からそういう方針ですか、それとも違う方法を試したりしましたか?

阪根: 特にルールは設けていません。弊社はパリやサンフランシスコに支社がありますが、そこでも時には英語を使ったり、日本語を話したりとそれぞれが喋りたい方を状況に応じて使っています。

ティム:好きな言語を使ってしまうと、それぞれのチームで言語がブレてしまいませんか?コミュニケーションのむらは出ないのでしょうか?

阪根:私たちにとって大きな気づきは、マネージャーが英語・日本語の両方を使って指示を出せることが重要だと気づきました。

倉原:公用語は英語です。テクニカルドキュメント、ミーティングなども英語です。日常会話は日本語も英語も使います。

ティム:倉原さん自身は日本人なのに、なぜ公用語を英語にしたのですか?

倉原:そもそも私たちのビジネスの顧客の大半は外国の企業なので、創業初期からグローバルなチームを作る必要がありました。最初のチームメンバーの多くは日本人でしたが、現在は外国人メンバーも増え、グローバルチームを築くことができました。外国人を採用してから英語を公用語にしました

ティム:Zehitomoはどうですか?

ジョーダン:最初は英語でした。私たちの場合は言語以上に、文化を重視していて、カルチャーが米国のようになることを意識にしています。細かいことですが、日本人でもファーストネームを使ったりします。

ティム:日本にいる外国人だと日本語で話さないといけないというな気がしますが、どうですか?

ジョーダン:ユーザーは日本人なので、営業はもちろん日本語を使っています。ただ、カルチャーのために、チーム内では英語アレルギーが生まれないように気をつけています。とはいえ、英語アレルギーがない人でもテクニカルな議論や戦略といった難しいことや細かいことは伝わらないことがあるので、そういった時は外国人でも日本語を使わないといけないでしょう。

倉原:私たちの場合、テクニカルな議論や戦略などは全て英語で話しています。

阪根:私たちのミーティングは、90%日本語で10%英語です。

ティム:外国人が働きやすい環境を作るよう、採用に当たって特別なプロセスや採用テクニックはありますか?

倉原:日本に住んだことがない外国人に関しては、不安を和らげる必要があり、ビザや職場の外の生活、引っ越しといった仕事以外のことをケアすることに時間をかけています。

ティム:そういった外国人は海外で採用したのですか?

倉原:はい、海外でも採用を行いました。

阪根:私も海外で採用しています。日本で優秀なエンジニアを探すのに苦労したので、初期から外国籍の優秀なエンジニアを探していました。特に東ヨーロッパのエンジニアは優秀でした。しかも彼らは日本で働きたいと思っているので、ビザを出すことが大きなインセンティブになったと思います。

ティム:どういった外国人が日本の生活にフィットすると思いますか。

阪根:私の会社の場合には、アニメやまんがを含む日本の文化が好きというエンジニアを(結果的に)採用することが多かったです。

ティム:私の会社の場合には、むしろ逆でした。日本が好きという動機でジョインしてもらうと、1年くらいで満足したり、なんか違うなと思って帰ってしまうなどがありました。

ティム:Zehitomoはどのようにグローバル人材をマネジメントしていますか?

ジョーダン:人材のマネージメントの中でも、採用は会社の要です。採用の際には、会社のカルチャーフィットを大切にしています。インターンや契約という形でまずは試用期間を設け、カルチャーフィットが合うかをお互い見るための時間を持つようにしています。採用候補者にとって、Zehitomoがカルチャーを心地よいと感じるかどうかが重要です。

Zehitomoのカルチャーは成長できる・モチベーションを高く持って働けることを大切にしています。さらにチームメンバーは自由な社風、また成果を重視しています。ですから、マネージメントする側もメンバーが挑戦できる環境を構築するよう管理しなければならないと思っています。

ティム:どんな時にカルチャーがフィットしていないと思いますか?

ジョーダン:うちの会社に来る人の多くは、自由な外資系企業のようなカルチャーが好きな人が多いです。しかし、そういう外資のカルチャーが好きな日本人を採用した後に、やっぱり日本人の考え方が抜けなくて合わなかったということはあります。だから自分の中でも外国人パワーを上手く使って、外資系カルチャーを巻き込む努力しています。

ティム:グローバルチームを作るための教科書や王道の方法などはないので、色々失敗から学ばないといけないですよね。皆さんはどんな失敗から学びましたか?

阪根:情報共有には当初苦労しました。スタートアップなので日々情報が変わります。また、日本語を話せないエンジニアはどうしても2〜3人で固まってしまっていたことはありました。なかなかそこにケアをできず、そのような孤立状態にあったことに気づけませんでした。

こういった失敗を解決しようと思い、日本人と外国人のチームにしてみましたが、時すでに遅く、辞めてしまった外国人もいます。ですから、マネージャーやディレクターの人はバイリンガルであることが必須だなと気づきました。

ティム:確かに現場だけでなく、経営者もグローバルなカルチャーであることが大事ですね。Zehitomoはまだ創業間もないですから、まだ失敗はないかもしれませんがどうでしょうか。

ジョーダン:Zehitomoは「Hire fast, fire fast. (素早く採用し、合わなければ素早く辞めてもらう)」というようにしていて、カルチャーが合わないときは、さよならも早いということです。

単に役職や仕事内容が合わないということもありますので、役割を変えたり工夫することでうまくいくことも多いです。しかし、役職以前にモチベーションが低い場合は、そういった工夫をしてもうまくいきませんし、チームにとっても悪影響です。

こういったことは1ヶ月一緒に働ければ、合うか合わないかはわかります。一緒に働いた経験がないまま採用してしまうのは、リスキーでもあります。だからこそ試用期間でお互いのカルチャーフィットを確認します。

ティム:インフォステラはどうですか?

倉原:実はまだそこまで大きな失敗はないんですよね。ただ創業初期のメンバーは最近一人やめてしまったのです。なぜかというと、やはり英語に苦手意識があって、チーム内で孤立してしまっていたんですよね。チーム全員がハッピーになる環境をどうつくるかが重要だと学びました。

ティム:逆に公用語を英語にしたせいで、日本人が働けなくなったということはありますか?

倉原:やめてしまった彼の問題があってからは、採用の時の選考基準の優先順位に、「英語を喋れる」というものを入れるようにしました。

ティム:今、エンジニアが不足しているのが問題ですよね。だから会社側も外国人を採用するなど、採用に関してフレキシブルにならざるを得ない部分があると思います。それは今後も続くと思いますか?

倉原:日本企業は外国人採用を継続的に行っていかねばならないとは思います。なぜなら、日本の人口が減少しているので、外国人を探さなければならないのです。

ジョーダン:日本の人口が減っている一方で、日本にいる外国人は増えています。またグローバル企業になりたい日系企業も増えています。ですから日本企業の外国人採用へのニーズは続くでしょう。

阪根:リーマンショックのような経済危機が起これば、企業はそもそも誰も採用しなくなるかもしれませんが、そういったことがなければ、国籍関係なく色々な優秀な人材を採用していくような流れになると思います。

参加者からの質問:多国籍なチームであれば、ワークライフバランスの認識が異なることがあるかと思います。ワークライフバランスの期待値が異なる場合はありますか?

倉原:スタートアップ全般に言えることかもしれませんが、アーリーフェーズの時には開発が重要でリモートワークなどは難しいです。ただフェーズがすこし経つと、色々な働き方の環境を提供します。実際に現在ではリモートワークも可能です。

阪根:うちの会社はかなり日本カルチャーですが、外国人もしだいに馴染んでくれています。そういった意味ではチーム全体がフレキシブルなカルチャーなため、うまくいってるのかもしれません。外国人でも、一週間のチームリトリートにも参加してくれています。

ジョーダン:ワークライフバランスに関する価値観も、カルチャーフィットと関係していると思います。カルチャーと同様に、ワークライフバランスに関する考えもあってると思う人にジョインしてもらいたいです。Zehitomoでは「X時間働いてください」 のような会話はありませんし、定まった労働時間などはありません。オフィスに何日いるかいないかを気にする必要はないと思います。結果を大事にできる人があっていると思います。

最初のうちは確かに、自由にしすぎて管理が難しかったですが、やはり労働時間を細かく管理するようなカルチャーではいたくないと思っています。

参加者質問:私自身は日本の修士課程にいる外国人なのですが、このような日本に留学している修士課程学生にこそ採用のチャンスがあるのでは無いかと思っています。しかしながら、彼らはスタートアップのことをあまり気にしていません。これについてどう思いますか?

ジョーダン:日本に留学している外国人は文系の人が多い気がします。なので、エンジニアなどの技術者を採用するという意味では、あまり重視できていないです。

一方、ビジネスサイドとしてみてみると、日本に留学している外国人の中には日本語を話さない人がいます。そういった人を採用するのは厳しいかもしれません。なぜなら、Zehitomoの営業となると、日本語を使うことが前提条件になります。私たちのように国内市場をみている会社にとっては、特に言語のスキルは必要になります。

なので、日本語ができるか技術がないと採用は厳しいかと思います。

阪根:私はそういった学生や新卒にリーチしたいと思っているので、どのようにアクセスしたらいいのか知りたいですね。

倉原: うちの会社の場合には、まだ若手を教育する余裕がないので、どうしても学生よりもベテランの採用を重視してしまいます。

ティム:大企業であればインターンの枠組みなどを整えるような気がしますが、スタートアップであればインターンを育てるというより、学生の中でもすでにスキルを持った人を探す傾向があるかもしれません。

参加者質問:バイリンガルを採用するメリットは?

阪根:グローバルに成長したいので、バイリンガルのスキルは重要です。そういった人材がいてくれることで、チーム内のカルチャーミックスにも貢献していると思います。年齢、国籍が多様であるほどいいかと思います。

倉原:そうですね、やはりグローバルに成長することができます。日本人のチームだけであればドメスティックな環境でとどまってしまうでしょう。グローバルなチームであれば、グローバルなパートナシップを組むこともできます。

ジョーダン:バイリンガルがいることで、コミュニケーションスタイルや決定プロセスにも影響してくれます。意思決定にも貢献してくれるでしょう。

ティム:非効率なところも出てきてしまうかもしれませんが、多様な意見は重要でしょう。経営者としても様々な視点をもてるという意味ではすごくいいと思います。

参加者質問:西洋のスタートアップシーンと日本では違いはありますか。

ジョーダン:日本はアメリカと比べて、スタートアップで働こうと思っている人の人口も少ないですし、投資家の規模もまだまだ小さいと思います。そういった意味で日本のスタートアップを取り巻く環境は欧米と違うでしょう。しかしシリコンバレーのような環境が、今後日本にもやってくると思います。

倉原:私は日本とアメリカの両方を知っていますが、日本の優秀な人材は大企業を未だに好むと思います。よりアメリカの方がスタートアップに優秀な人材が流れています。

阪根:個人としてはシリコンバレーと日本のスタートアップの環境の違いはそんなにないと思います。ただスタートアップが創業初期からグローバルを目指しているのがアメリカで、日本の場合にはまず国内で成功してから海外に行くのがスタンダードかと思います。

Born Global スタートアップとは?

マーク・マクダッド氏(マネーツリー株式会社共同創業者)

今回はBorn Globalスタートアップ(生まれながらにグローバルなスタートアップ企業)についてお話しようと思います。

まずMoneytreeのご紹介をしますと、弊社は2012年に渋谷で創業したフィンテック企業です。日本の金融機関が提供するサービスと、ユーザーのニーズのギャップを解消するために立ち上げました。金融機関とパートナシップを組み、34の大企業に対し、金融系APIを提供しており、これは日本のフィンテック企業としては最多の連携数を誇ります。現在100万人以上のユーザーに使っていただいています。

この数年間の間に3名から51名の企業に成長しました。起業家にとってスタートアップは自分の子どものようなものですが、社員を採用した瞬間からそのメンバーにとってもそのプロダクトが彼ら自身の子どもになるのです。採用をして行く中で学んだことは、「会社として一人でも採用すると、大きな責任を伴うリーダーとなる」ということです。

成功からの学びもあれば、失敗からの学びもあります。まず、私が採用する際に学んだことをご紹介します。

採用すべき人材の特徴:創業初期のスタートアップが人を雇うとき、その多くは自分にできないことをできる人を雇うことを目的とします。しかし、この時に重要なのは、本当にその人に「自分ができないことができる」ポテンシャルがあるのかどうかを見極める必要があります。また、採用する時には副業などではなく、フルタイムで取り組めるメンバーに参画してもらうことが大事です。なぜなら日々変化の多いスタートアップにとっては、明日ではなく「今日」対応できるメンバー、今の課題を解決できるメンバーを探すことが重要だからです。
多国籍チームに重要なこと:Moneytreeには、16の国籍の51名のメンバーがいます。社内では主に英語でコミュニケーションを取りますが、日本語を話すメンバーも多いです。会社が大きくなると、色々な「摩擦」がおきます。特に多国籍のメンバーからなる多様性の高い環境において、健全で意義のある摩擦を生み出すことが大事です。
採用方法において重要なこと:明確な採用プロセス、詳細な募集要項(仕事内容)、ビジョンの3つがあれば優秀な人材を呼び込むことができます。

今回イベントに来ている人の中には起業を考えている方もいるかもしれませんし、スタートアップへの転職を考えている人もいるかもしれません。仕事を探している人は、自分の強みや弱みを知った上で、他の人にないバリューがなにかを知ることが大事でしょう。

投資先によるピッチとネットワーキングタイム

2つのメインセッションの後、投資先のスタートアップによるピッチと、マッチングのためのネットワーキングタイムを設けました。500 Startups Japanの投資先の中には、すでに外国人を採用しグローバルチームを築いている会社も少なくなくありませんが、これからグローバルなチームを目指す会社も含めて、バイリンガルや外国人参加者との交流が行われました。

想像以上の来場者数と会場の熱気を実感し、私たち自身も日本のスタートアップに関心があり働きたいと思っているグローバル人材がこれほどいるのかと非常に驚いています。引き続き、500 Startups Japanでは投資先のグローバル展開支援を活発に行なっていきたいと考えています。

吉澤美弥子

慶應義塾大学看護医療学部卒業。在学中に海外のヘルステック企業やデジタルヘルス企業に関して取り上げる、HealthTechNewsを立ち上げ、2016年売却。外資系証券会社の株式リサーチ部で、TMT市場に関わる調査アシスタントなどを経て、500 Startups Japanに参画。

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