Healthcare Credibility

医療・ヘルスケア領域のスタートアップに必要な、信頼を築くための3つの基本

取り組む業界に限らず、スタートアップは信頼を得られるようなブランドイメージを築くことが重要です。特に、ヘルスケアや医療の領域においては、専門家とそうでない人の情報の非対称性が大きく、かつ不確実性が伴うため、医療機関や企業、そして消費者は企業を選ぶ際に慎重になる傾向があります。

一般消費者の間でもヘルステックが選択肢の1つとして普及している米国でも、民間企業に自分の身体的アクティビティのデータを共有したいと考えている消費者は12%しかおらず、病歴の場合には8%、遺伝子データは9%となっています。さらに提供してもよいと答えた消費者のうち、Googleに提供しても良いと考えているの人は60%にもかかわらず、AmazonやFacebook、IBMは40%以下と同じテック系企業でも差があることが分かります。

企業に自分のヘルスデータを提供したいと考える米国消費者のうち、実際に以下の企業に提供してもよいと答えた人の比率(2016年Rock Health調査)。

では、ヘルスケア関連のスタートアップはどのようにして、製品/サービスが信頼できるものであると証明すれば良いのでしょうか?今回はベンチャーとして立ち上がったヘルスケア・医療系企業が、消費者や大企業、医療機関や医師から信用できる企業として信頼を獲得するために必要なことをご紹介します。

医学的なお墨付きを獲得する

プロダクトが医学的な基準に達していることを示すために、外部機関が設けている基準に満たしていると示すことは、法人顧客を獲得する際や大企業や医療機関と提携する際に非常に役にたつでしょう。特に公的機関からの承認を得るには、時間と資金の両方のリソースを割く必要があるため、ベンチャー企業にとっては非常に大変なことです。しかしながら、遅かれ早かれ、会社が拡大していく上では避けては通れないことになるでしょう。

オーストリアのスタートアップmySugrは、創業当初から米国FDAとEUの基準を満たすことを非常に重視していました。この基準を早期に満たしたことにより、同社は単なる健康器具ではなく医療機器として医療の治療に役立つと伝えることができたのです。糖尿病患者向けサービスという非常に競合が多いマーケットにもかかわらず、mySugrの提供する血糖管理アプリLogbookは60万登録ユーザーを達成し(2016年4月時点)、世界的製薬メーカーのRocheからも資金調達を行なっています。

また、遺伝子検査サービスを提供している23andMeは、今年の4月FDAを取得したことで、医師の処方がなくても消費者に遺伝性疾患のリスクに関する検査結果を渡してもよい、世界で唯一の企業となりました(現在は10の疾患のみリスク情報の提供が可能)。同社は2006年の創業以来、自宅でできるDNA検査とそれに基づく祖先情報や医療情報の提供をサービスとして展開していましたが、2013年サービスの信頼性が低いとしFDAより販売停止に関する公開書簡を発行されました。23andMeはこれを受けて検査後の医療情報の提供を中止したのです。このニュースは米国国内だけでなく、日本のメディアも大きく取り上げ、批判の対象となっていました。今回FDA承認された後、今年9月には、シリコンバレーの大手ベンチャーキャピタルであるセコイア・キャピタルがリードで評価額17億ドルで2億ドルの資金調達を行うなど、再び脚光を浴びています。

臨床試験・実証実験を行う

また、臨床試験や実証実験も信頼を担保する上で有効な手段になります。

ドイツのEmperraは、糖尿病患者向けのデジタルソリューションの有用性を実証するため、健康保険会社と協力し臨床試験を行いました。この試験には2年ほどかかりましたが、EmperraのCEOであるChristian Krey博士は、保険会社との交渉に置いて非常に重要な成果だと語っています。

実際の医療の臨床現場で使われる臨床試験を行うことは、ベンチャーにとって非常に大変なことかもしれません。まずは、実証実験という形である程度の規模のサンプルデータを収集できる機会を設け、サービスの効果を示すことは早期に必要でしょう。

情報の取り扱いに関する基準を満たす

最近では医療機関や医療関連機関の多くがテクノロジーを活用して、データを管理しています。また医療機関だけでなく、ヘルスケアサービスを展開する民間企業も同様です。米国では、ヘルスデータを安全に保持し活用するために、このデータ管理に関する厳しい基準「HIPAA (医療保険の携行性と責任に関する法律) 」が設けられ、ベンチャー企業もこれを遵守しています。

国内の場合には厚生労働省が、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を出しています。


まだまだ医療の領域は閉ざされていますが、一つ一つの企業が信頼性を築くことで、ヘルスケア領域でのテクノロジー活用が増えていくのではないかと私は考えています。何かフィードバック等ございましたら、いつでもコメントやご連絡をいただけますと幸いです。

吉澤美弥子

慶應義塾大学看護医療学部卒業。在学中に海外のヘルステック企業やデジタルヘルス企業に関して取り上げる、HealthTechNewsを立ち上げ、2016年売却。外資系証券会社の株式リサーチ部で、TMT市場に関わる調査アシスタントなどを経て、500 Startups Japanに参画。

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