Shippio Designer 1

美大卒・大手IT企業出身デザイナーが、国際物流のスタートアップ「Shippio」でデザイナー職を再定義するまで

500 Startups Japanによる、投資先企業のチームメンバーインタビュー。第3回は、Shippioを運営する株式会社Shippioのデザイナー、松川 逸(まつかわ いつみ)さんにお話を伺います。

松川さんは、多摩美術大学を卒業後サイバーエージェントに入社し、UI/UXデザイナーとして新規事業立ち上げ、アプリ開発、WEBデザインを担当されました。会社員の傍、週末はフリーでプロダクトのデザインやコンサルティングに関わり、現在は国際物流の効率化ツール「Shippio」を開発するスタートアップ、株式会社Shippioでデザイナーとして活躍されています。

ーまず最初に、新卒でIT企業に入った経緯を教えていただけますか?

美大に通ってた頃は、専門がグラフィックデザインだったので、広告やポスターのデザインばかりしていたんです。でも、ちょうどインターネットのサービスに触れることが増えたりスマホが出てきた頃だったので、就活時にはIT業界に興味が出てきて、何度かGREEやサイバーエージェントが主催する学生向けのビジコンに参加しました。そこで、初対面の人とチームをつくってサービスを考えているうちに、起業したりサービスをつくっている学生にも出会って、面白いなぁと思い始めました。それから、起業家やスタートアップで働く人たちと関わることが増えて、サービスをつくるお手伝いをするようになったんです。それまでは、自分でWebサービスをつくったことがなかったし、Webデザインもやったことがなかったので、全く新しい経験でした。

とは言え、そのまま卒業と同時に自分が起業するとか、スタートアップに入るというのはハードルが高く感じられて、スキルも無いし知らないことも多かったので、大手企業に入ってそれらを学ぼうと思いました。その中でもサイバーエージェントを選んだのは、スマホに関連する新規事業を多く出している時期だったので、ゼロイチで事業をつくりたいと考えていた私に合っていると感じたからです。

ー実際に新卒入社されてからはどんなことをされていましたか?

入社してからは、アプリやWebサービス、Webメディアのデザインを3年半のうちに4〜~5プロジェクトほど担当しました。ずっとC向けのサービスでした。希望すればやらせてもらえる環境だったので、1からから事業立ち上げに関わったこともありました。そんな中で、アプリをつくるスキルや、UIをつくるスキルは身についてきたんですが、「自分はどの過程が好きか?」と考えると、コンセプトやビジネスモデルを考えたり、それに対してプロダクトでどうアプローチしていくか、ということを突き詰めて考える部分だと気付いたんですね。
ただ、難しいのは、結局いいものや見た目がかっこいいもの、綺麗なものをつくっても流行らないことがあるんですね。だから、もっと前段階のコンセプトづくりだったり、ビジネス的なインパクトを考えるところから携わりたいっていう気持ちが大きくなっていったんです。

ーなるほど、そこでスタートアップに入ろうと思ったんですか?

いえ、転職を考え始めた当初は、外資系のコンサル会社に興味を持っていたんです。いろんなビジネスや事業を見たいからという理由だったんですけど、次第に1からビジネスをつくるところをもっとやりたい、泥臭いことをしたいなと思うようになったんです。ちなみに外資系にこだわったのは、英語も話せる環境に身を置いてみたかったからです。

そんな中、偶然参加した商社のイベントで、Shippioの佐藤さんに出会いました。当時、業界に限らずいろんなイベントに参加して勉強することが好きだったので、「商社出身の人はどんな分野で起業するんだろう」と思いながらも純粋な興味で参加してみたんです。 最初は、「物流」と聞いても全くピンときませんでした。まず、自分がユーザーではないので課題感も分からないし、地味だし、デザイナーとして何をするのか全くイメージが湧きませんでした。でも、話を聞いているうちに、彼らがやろうとしていることが、業界自体を大きく変えうるんじゃないかと思ったことと、物流業界はまだデザインが全く入っていない領域のように思えて、想像するだけでもすごく複雑だなと感じて。デザインって、そういう複雑なものをよりよくするためにあるんじゃないかなと興味深く思えました。

他の業界と比べてデザインの前例が無いし、自分はtoBのデザインもやったことが無かったけど、そういう新しくて難しいことの方がやりがいがあるんじゃないかと思ったこと、メンバーと話をしていく中で、佐藤さんを含め経営層の方々が、デザインを重視してくれているのが面白いなと思って最終的に入社を決めました。この業界でそういう風に考えてくれている人はあんまりいないんじゃないかなと思います。

ー実際に入社されてみてどうでしたか?入ってみて、実際会社やメンバーの雰囲気は?

良い意味で変なギャップは無かったですが、思った以上にみんな自分の意見を言うなぁと感じました。プロダクトに対して、良いと思うことはみんなオープンに意見するんです。あと、最初にワイヤーやフローを考える時に、みんなで考えながら「ここはこうじゃない?」と話し合える環境は、入社したばかりの私も自分の意見を言いやすいし、とても良いなと思いました。

10人以下のスタートアップだと、当然デザイナーは少ないんですよね。私も今の会社では1人目でしたし。だから、プロダクトに対して、経営層やメンバーと対等に話ができる、ちゃんとコミュニケーションをとれるかどうかも本当に重要だと感じます。このチームは、いいものをつくるために、事業としてどうしていきたいのか、経営目線にデザインも上手く混じえて話し合える環境です。

これまで、「デザイナー」としてのタスクだけがえんえんと降ってくるとストレスを感じることもありました。誰のために何をつくっているのか、分からないまま取り組むのが嫌だったんです。今は、ユーザーの課題は何なのか、どこを押さえればプロダクトが伸びるのか、分かった上でサービスをつくれているので、そういう意味ではやりたいことがちゃんとできている環境だと思います。しいて言うなら、英語がまだまだかな、基本的にミーティングは全部英語で行われるので。

ーとても多様なチームですもんね。ちなみに、ずっとC向けのサービスをつくってきたと先ほど仰っていましたが、そこはどう乗り越えたんですか?B向けで、特になかなか馴染みのない業界だったとも思いますし。

入社してから、コーポレートサイトや資金調達に向けたピッチブック、プロダクトのデザインはもちろん、それ以外のこともしてきました。
例えば、ユーザーに自ら会いに行って、1日の業務フローを朝から晩まで見て、話を聞いて、ビデオや写真撮影をして、彼らにモックアップを見せて、社内に持ち帰って他メンバーと共有し合って、みたいなこともしています。このプロダクトを使うユーザーがどういう人たちで、何に困っていて、どういう環境で、どういう業務フローで仕事をしているのかを学びに行くんです。何なら、フォワーディング業務をやることもあります(笑)。
ユーザーが実際に業務の中でどこにストレスを感じるのかを体験したくて、通関書類を作成して、「この書類、同じことばっかり入力してるじゃん、私だったらこれは嫌だなぁ」って考えることもあります。

ITやデザインがまだあまり入っていない業界においては、最初に実情を知るための努力が、デザインする上でとても大切です。もともと、前職で「妄想でものをつくるのは良くないな」と思っていたからこそ、ユーザーを理解するために会いに行くし、自分でも体験するし、投資家とのミーティングにも同席させてもらったりするんです。投資家とのミーティングは、事業を理解するためには効果的で、例えば、「社長が投資家に説明するときはどんな表現を使っているのか」「今後、ビジネスをどうしていきたいのか」、「投資家が、どういう点が気になってどんな質問をしてくるのか」を観察することによって、事業を成長させるための勘所が分かって、経営層とも話しやすくなるんですよね。

ーそこまでされているのですね、すごい。それらは全部、自分で希望されたんですか?

そうです。いちメンバーだけど、経営者と同じ目線でいるという気持ちを持ちたくて、自ら希望して「行きたいです」って伝えますし、ちゃんと経営層も「いいよ、一緒に行こう」って言ってくれる環境なので、有難いですね。
デザイナーだからと言って、机の上でスケッチをして作業するだけっていうのはあんまり好きじゃなくて、もっとユーザーを理解するための行動をとるのが大事だと思っています。だから、入社する前に、「デザイナーだけど、ユーザーに会いに行ってヒアリングをしたいし、調べること、ビジネスを考えることも一緒にやりたいです」ってずっと言ってきました。

よく、スタートアップとデザイナーのミスマッチの話を耳にすることがあるんですが、例えば、経営層が一方的に「あなたアニメーションできるでしょ、UIできるでしょ、あれやってね」とデザイナーに伝えるのはあんまり良くないと思うんです。あくまで、従業員のデザイナーでも「私はこういうことがしたくて、こういうことならできます」と、自分は何ができて何が得意で、何をしたいかを伝えるのが大事だと思います。

最も、私がそう考えるようになったのは、有難いことに、今の会社の経営層やメンバーがデザインに理解があって、一緒にUIのフローについて考えてくれたりアドバイスもくれるし、デザインの前段階のリサーチやユーザーに会いに行ったり、フィードバックをもらうことも全部工数に含めてくれているからですね。だから今は、調べて、学んで、ひたすら考えて、ワイヤーをつくって、ディスカッションして、色とか機能はそれに沿って置くだけ、っていう感じです。

もちろん、サービスやユーザーの特性によって違うと思いますが、うちのプロダクト、特に現在の事業段階においては、見た目の細かい部分に時間を割くより、全体的なフローの中で、いかにユーザーがストレスなく業務を完了できるか、従来のフローと比べてどれだけ時間が短縮できるかが重要なので、デザインの前段階の検証にかなり注力しています。C向けサービスみたいに、アニメーションに時間を割いても意味がないので、頑張りどころを押さえるのが重要だなと感じます。

あと、難しかったのは、Shippioと同じようなサービスは海外にはあるけど、一般の人はなかなか触れないんですよね。私たちと一緒で、企業向けでお金を払わないと使えないので。だから、UIをなかなか参考にできないから、物流に限らずいろんなツール系のアプリやサービスをひたすら調べて、「あ、この部分あそこに使えるかも」と考えることもあります。

ー素晴らしいマインドセットですね。勉強になります。そういう意味で、少し前の、前職時代や美大生だった頃の松川さんのような状況に今いる方向けに、何か伝えたい想いみたいなものはありますか?

最近感じるのは、デザインの定義が広過ぎて「この人はイラストが得意」「この人はUIが得意」っていう人たちをまとめて「デザイナー」に括られてしまうので、少し不幸だなとも思います。若手の頃は、色々なことを試してみて、自分がしっくりくることとか、好きなことを開拓していくと良いと思います。
その後で次のステップにいきたいと思うなら、デザインだけに限らず「どういう瞬間や作業が好きか」を考えて進んでいくのが大事だと思いますね。

あと、「デザイナーはコードを書けるべき、〇〇すべき」みたいな話もよく聞くけど、大事なのは「周りがこうだからこう」ではなくて、トライアンドエラーを重ねていって、自分の中では本当は何が好きで何が得意なのかを追求していくことだと思います。

若手だと、つい「これもできなきゃ、あれもできなきゃ」って不安になる時もあるけど、コツコツと見極めていけば良いんです。私は、前職時代にその焦りみたいなものを結構感じていたのですが、最終的には自分はここが好きだな、この部分をもっと重点的にやりたいなって思えたから、今の道を選びました。

ーありがとうございます。最後に、松川さんの今後の展望や成し遂げたいことを教えていただけますか?

美大生の頃は、周りがアートやグラフィックをやっているから自分もそれで良いと思っていたんですけど、心の奥底にはずっと、世の中の役に立ちたいというか、デザインによって経済を動かしたいという思いが強くありました。綺麗でかっこいいものをつくることで賞をとったり、他者に褒められることももちろん素晴らしいことですが、自分はそこにはあまり興味が持てなかったんです。

PRや広告はその一瞬を盛り上げるものだけど、長い目で業界を変えたり、世の中の仕組み自体を変えるものをつくりたいんです。本質的には、デザインを社会や経済の中で重要な役割にしたくて、インパクトの大きなことをしたいと考えているからこそ、そのためのプロダクトやサービスをやっていきたいと考えています。

だからこそ、それを実現できるこの会社を大きくして、海外でも物流に携わる人たちに使ってもらえるようなサービスにしていきたいですね。自分にとってUIがつくれるっていうのは目的ではなくて手段だから、世の中で何が本当に求められているのかを考え続けて、そこに対して自分はデザインで何を貢献できるかを追求していきたいです。

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