J KISS Kota Yamaguchi

山口弁護士に聞く、シードスタートアップのための資金調達 – J-KISSの交渉事項と契約書

6月28日、ミクシィのCVC「アイ・マーキュリーキャピタル」が、「シードスタートアップのための資金調達J-KISSによるファンディングの概要と実例」の勉強会を開催しました。今回は勉強会で語られた内容の一部をご紹介します。

今回の勉強会の前半では、弁護士の山口孝太先生をお招きし、コンバーティブルエクイティの概要とJ-KISSの契約書のポイントをご説明いただきました。山口先生は日本とニューヨーク州の弁護士資格を持ち、M&Aやクロスボーダー取引、海外企業の日本進出といった案件を多数経験されています。また、スタートアップにも強い関心をお持ちで、独立後は様々なベンチャー企業の資金調達やエグジットの際の契約交渉などに携わっています。実際にJ-KISSでの資金調達の案件を多数経験されている山口先生に、J-KISSの概要と実際の契約書の内容をご説明いただきました。

* J-KISSは500 Startups Japanが公開している、コンバーティブルエクイティによる投資契約書の雛形です。こちらから無料でどなたでもご利用いただけますので、ぜひご覧ください。


J-KISSなどコンバーティブルエクイティは、資金調達の手法が発達してきた歴史において、創業間もない企業が、より簡単により早く、より起業家にとって有利に資金調達できるよう産み出された新たな資金調達手法です。今回はまず、投資契約書の歴史的な変化を追うことで、J-KISSがどのように従来の手法と異なるのかお話し、また、契約時に肝となる部分をご説明していきたいと思います。

J-KISS誕生の背景

VCが起業家に投資したいとなった場合、VCは自分たちの魅力を起業家に伝えることで投資を実現させます。VCはそれぞれ投資契約の雛形を持っており、それがいかに起業家フレンドリーかというのもアピールポイントになります。ですから、VC間の競争が増すと、資金調達の契約はより起業家に有利なものになっていきます。J-KISSも、より起業家フレンドリーであることを目指した投資契約書のテンプレートとして、500 Startups Japanによって作られた雛形です。

資金調達の歴史とJ-KISS

1) 普通株とは
もともと、ベンチャーの資金調達は普通株式で行われていました。普通株式による投資の場合、契約書は株式引受契約と株主間契約の2つが一般に用いられます。

  1. 株式引受契約
    株式引受契約はどの価格でいくら出資するかという契約です。調達額とバリュエーションが重要なパラメーターになります。
  2. 株主間契約
    株主の誰が何を決めるかという、意思決定に関する事項を主な内容とする契約です。この株主間契約がなければ、持株比率が50%超の株主(=起業家)が、他の株主(=投資家)の了承がなくても、物事を決めることができてしまいます。しかしVCとしては、たとえ自分の持株比率が5-10%程度だとしても、いくつかの重要な事項の決定には関与したいと考えます。そこでこの株主間契約によって、ある一定以上の重要な事項を決定するためには、投資家の事前承諾が必要になっています。ですので、例えば、増資や業務提携、取締役の選任といったことに関しては、5-10%しか株式を持っていないVCであっても、事前に承認を取ってくださいと求めてくるのが一般的です。また、株主間契約においては、意思決定に関するだけでなく、以下のような株式発行・譲渡に関する条項も含まれています。
  • 先買権/First refusal right:起業家が株を誰かに売りたいと考えた場合に、まず投資家に買いたいかどうか聞きなさいという権利です。投資家としてはもし会社が十分に魅力的だと考えれば、他の人に株が渡るよりは、自分たちが買いたいと考えるでしょうし、魅力がないと判断すれば買わないということです。
  • 共同売却権/Tag along right:起業家が株を誰かに売りたいと考えた場合に、投資家にも一緒に売る機会をくださいという権利です。投資家は資金回収をする必要があるので、起業家だけが勝手に株式を売ってしまうのを防ぐ必要があります。
  • 強制売却権/Drag along right:会社に買収の話があった時に、株主間の意思統一ができていないとディールがまとまりません。そこで事前にいくら以上のオファーがあって、かつ一定の割合以上の株主が買収に合意したら、全員株式を売りましょうという条項です。

この株式引受契約と株主間契約という2つの契約書を、別々に締結するのではなく、まとめて1つの契約書としているVCもありますが、2つに分けておいた方が後々楽なのでまとめないほうがよいです。株式引受契約は、投資実行の際にどの価格でどのくらい投資しますということを決める、投資時点についての「点」の契約です。一方、株主間契約書は投資実行後の継続的な関係をコントロールするためのいわば「線」の契約で、投資家が増えたごとに再度巻き直す必要があります。この2つが一緒になってしまっていると、投資家が増えて株主間契約を巻き直す際に、複雑になってしまいます。

普通株式で資金調達を行う場合であっても、きちんとやるのであればこれだけのことを交渉してようやく資金調達ができるのです。

2) 優先株式とは
実は優先株式という名称は会社法にはなく、会社法では種類株式というものになります。種類株式には、配当が優先されるものや、議決権があるもの・ないものなど様々な設計があります。スタートアップの投資において用いられる優先株式とは、基本的に、配当が優先するか、残余財産分配が優先するかというが重要な要素となります。

現在の実務では、優先配当(配当を行う場合に普通株式の株主より先に、優先して配当してくださいというもの)が含まれている優先株式というのは少ないです。なぜなら、スタートアップが黒字になって配当を出すということは極めて珍しいことだからです。それでも1~3%程度の優先配当が付いている投資契約も存在します。もし投資家から提示された投資契約に優先配当がついていたら、削除することを求めるのがよいと思います。

そうしますと、残余財産の分配が、優先株式の株式の内容についてのほぼ唯一の重要な論点になります。残余財産の分配とは、会社が解散したときに残った財産をどのような順番で分けるかということを定めるものです。まず、そもそも、会社が解散されたとき、会社の財産は、株主ではなく、債権者に返します。一番初めが、担保を持っている債権者で、次に担保がない債権者となり、残った財産を株主で分けます。このときに、株主の間でも、他の株主よりも先に残余財産を分配される権利が、残余財産分配の優先権になります。

「そんなに会社が解散するなんてことあるのか?」と思われるかと思いますが、会社が倒産してしまった場合だけでなく、M&Aによる売却時も、解散したときと同様の計算方法でに売却対価を分配するので、残余財産の分配の設計は、起業家・投資家双方にとって、とても大切です。。(*「みなし清算」とは、このようにM&Aの際の対価の分配方法においても、解散した時の清算と同様に行うことを指す単語です。)

3) コンバーティブル・ノートとは
ここまでは株式による資金調達についてご紹介してきましたが、コンバーティブル・ノートは債権、つまり借入を使った資金調達です。ちなみに、「ノート」というのは日本で言えば「手形」に該当します。

このコンバーティブル・ノートという手法が誕生した背景には、創業初期の企業の資金調達を簡略化するという目的があります。優先株式による資金調達の契約書は、例えば、株式引受契約・株主間契約それぞれが20ページを超える分量になることがあります。さらに英語で契約書を締結する場合には、日本語の契約書の2倍にもなることがあります。まだプロダクトもできていないような創業初期の企業が、例えば1,000万円〜数千万円程度の資金を調達するために、このような複雑な契約交渉をするのは大変だということで、これを簡略化するためにコンバーティブル・ノートが生まれました。

株式ではなく債権で調達することで、これまで話してきたような株主の権利や株式の売り買いに関するような合意事項がなくなり、一気に交渉すべきことが減りました。それでも契約書の分量は10ページ位にはなりますが、重要なのは、借りるお金の満期と利息がどのくらいかということだけを考えればよいので非常にシンプルです。

借入をしてしばらくした後、株式で調達しようとするタイミングで、この債権が株式に変わるように、すなわち「コンバート(転換)」するように設計されているため、コンバーティブル・ノートと呼ばれます。そして、この転換に際し、どのように株式に変わるかという条件が交渉ポイントとなります。ですので、以下の二つのことが重要なポイントになります。

  • バリュエーション・キャップ/Cap
    次の資金調達の際に、会社の価値が高くなり過ぎてしまっていた場合、株価が高くなるので貸していたお金を株式に変えると、得られる株数は非常に少ないものとなります。投資家としては非常に早い段階でリスクをとって投資していたのに、これでは割に合わなくなってしまいます。ですので、次の資金調達時のバリュエーションが一定額を超える場合には、事前に合意した「上限のバリュエーション」で転換を計算しようというものです。これはCapとも呼ばれます。
  • ディスカウント/Discount
    Discountは、次のラウンドで一株100円で株式を買えるとなった場合、早い段階で投資していた投資家はリスクを負ったのにも関わらず、後から入ってきた投資家と同じ金額で買うのでは割に合わないと考えます。そこで、コンバーティブル・ノートで出資していた投資家に関しては例えば80円で買えるようにしよういうのがディスカウントです。ディスカウントは20%程度が多く見られます。ごく稀に起業家の交渉力が強い場合には10%になることもあります。

このように、コンバーティブル・ノートで資金調達する際には、調達金額と、そしてCapとディスカウントを考えるだけなので、交渉としては極めて速やかに終わることが多いです。そのため、この調達手法は一世を風靡しました。さらに一時期、日本の起業家の間でも、シリコンバレーで起業し、デラウェア法人を設立したりする事例が多かったときは、このコンバーティブル・ノートでの、日本の投資家からの調達も、多く見られました。

4) コンバーティブル・エクイティとは
コンバーティブル・エクティとは、一点を除いては、ほぼコンバーティブル・ノートと似ています。コンバーティブル・エクイティが誕生した背景には、コンバーティブル・ノートがあくまでも債権であることで問題が生じてしまったことがあります。すなわち、株式ではなくて債権ですと、法律上は投資家からお金を返せと言われた場合に起業家は返さなければいけないというリスクがあるのです。そこで、このように返せと言われることがなく、かつ数十ページもの契約書を巻く必要がなく、(コンバーティブル・ノートと同様に)キャップとディスカウントだけ交渉して調達できるようにしたものが、コンバーティブル・エクイティです。

アメリカではKISSやSAFEなど様々なコンバーティブル・エクイティがありますが、これはそれぞれのVCが作っているために違う名前が付いていますが、概念的には同様のものです。J-KISSとは、500 Startupsが作ったコンバーティブルエクイティの雛形「KISS」を日本の法律に沿うよう修正したものです。

J-KISSの交渉ポイント

J-KISSにおいては交渉が必要となる重要な箇所はごく一部しかありません。一旦J-KISSという雛形でやろうと、投資家と起業家の間で合意できた場合には、契約交渉コストが非常に少ないのが特徴です。

それでは、簡単に実際のJ-KISSの契約書を見ながら、どのような構成になっているのかご説明したいと思います。

表面保証と主要投資家の権利
J-KISSとは言えど、株主間契約や株式引受契約にある条項のうち、一部の非常に大切な条項は組み込まれています。それが表明保証といわれる条項と、主要投資家の権利についての条項です。

  • 表明保証(3ページ、4ページ)
    第3.1条と第4.1条の表明保証は、会社または投資家がちゃんとしたものですよということをお互いに確認するためにあります。これがないと、例えば投資するまでに受けていた説明が嘘だったりということが生じてしまう恐れがあるので、株式引受契約にあるものがJ-KISSにも入っています。株式引受契約の場合にはこの表明保証の部分だけで5ページを超える場合などもありますが、J-KISSでは、かなり少ない内容になっています。
  • 主要投資家の権利(5ページ)
    第5.2条の箇所は株主間契約でいう、投資家に対し起業家がきちんと果たす必要がある義務について定めています。とはいえ、株式ではないのでDrag Alongなどの項目はありません。

例えば、少なくとも四半期ごとに投資家に財務諸表は見せてくださいといった情報請求権が定められます。

また、優先引受権は、投資した投資家に対して、次の増資の際には、持株比率を維持する程度には、優先的に株式を割り当ててくださいという権利を定めるものです。VCは最初に一度投資しただけでは将来会社が増資した際にダイリューションしてしまうので、一般に自分の持分が薄まらない程度に株式を引き受けたいと考えます。

J-KISSによる投資の詳細条件

  • J-KISS型新株予約権発行要項(10ページ)
    別紙1がJ-KISS型新株予約権発行要項になり、ここがまさしくJ-KISSの実際の中身を決めている部分になります。J-KISSに限らず他の資金調達の際にも同様ですが、新株予約権や種類株式の内容は、商業登記簿に登記されます。登記された内容は、第三者でも見れるようになります。株式を譲渡したり、新株予約権を譲渡した際には、登記されているの内容は、誰に引き継いでも同様になりますです。一方で、この別紙の前の部分は、登記される権利の内容ではなく、相対での契約なので、株式や新株予約権を譲り受けても、必ずしもそのまま契約書を引き継ぐわけではありません。この違いを理解しておくことは大事です。J-KISSの中で、どこがキャップで、どこがディスカウントを定めているのかをご説明します。別紙の(2)に、転換価額というところがあります。ここの(a)の中の(x)がディスカウントを、(y)がキャップを決めています。
  • ディスカウントと総調達額
    J-KISSの雛形では、次の資金調達の総調達額が1億円以上のものであれば、新株予約権が株式に転換されるとしています。百万円ずつ資金調達するとか、つなぎで数百万円の調達を行うことなどもあるので、転換が起こるべき次の資金調達として想定する金額を事前に合意しておくのです。なのでこの「1億円」の部分は案件によって異なります。発行価額に0.8を乗じた価格で転換されるという部分が、20%のディスカウント(1 – 0.2 = 0.8)という意味になります。
  • キャップ
    (Y)に記入されるの評価上限額が、キャップです。このキャップの金額が、交渉する最も大きなポイントの一つになります。

J-KISSによる実際の投資事例

山口先生によるJ-KISSのご説明の後、500 Startups Japanの澤山陽平とアイ・マーキュリーの古市奏文さんも交えて、実際の500 Startupsの投資事例を元に、J-KISSによる投資のコツと検討のポイントについてお話ししました。

 

 

どのようにCapを決めるのか
澤山氏:バリュエーション・キャップを決めるのは、ベンチャーのバリュエーションを決めるのとかなり近いです。バリュエーション・キャップで実際に決まるのは投資家が最低限どのくらいの持分を持つことになるか、ということになります。会社のチームや事業、トラクションはどのくらいできているのかといったことを踏まえて交渉によって決まります。

バリュエーションはラショナルな(合理的に決定される)部分とイラショナルな(必ずしも合理性からは導かれない)部分があります。前者は会社の状況から決まるもので、後者は市場環境やモメンタムが影響するものです。例えば連続起業家が起業した場合や、ピッチコンテストで優勝したりなどして投資家から人気の案件だとバリュエーションは高くなりますし、その他市場環境で上下したりします。

バリュエーションは高ければ高いほどいいという訳ではありません。高くしすぎると次の調達やEXITの時に苦労することもあります。このあたりは長期的な資本政策を考える必要があります。

J-KISSのデメリットとは
澤山:J-KISSは新しいスキームなので、まずはファイナンスについてある程度勉強する必要があります。とはいえ、エクイティで資金調達するということは会社にとって重大な経営判断、それこそ会社に取って一番の資産を売るようなものなので、きちんとファイナンスを学ぶ必要があると思います。

J-KISSを出したばかりの時に、「J-KISSで投資を受けてしまうと、そのあとに投資家が入れたがらないのではないか」という問い合わせがありました。今まで500 JapanからはJ-KISSで9社に投資してますが、今のところこういったことはありません。そもそも投資家は良い会社であればなんとしてでも投資したいと思うでしょうし、J-KISSはベンチャーファイナンスをよく知る方々にご協力いただいて設計されたスキームですから、問題になることはないでしょう。実際にJ-KISSで調達したスタートアップがシリーズAに進んだ事例も出ています。あと、そもそもJ-KISSはシリーズAで転換して消滅してしまうものなので、ミドルやレイターの投資家にとってはほとんど気にする必要がないという点もあります。

強いて言えば、J-KISSは普通株式ではなく優先株式に転換されることを想定しているので、残余財産の分配時に1倍になるということはあります。なので厳密には普通株式での投資に比べて、経済的には若干投資家に優位な部分はあります。

山口:個人的にはそれはデメリットとはならないと思います。残余財産分配時に投資家が有利になる優先株式での投資の方が、普通株式での投資よりも、投資家はリスクを取りやすいので、起業家も、より高いバリュエーションで調達できます。なので、そもそもなぜ優先株式だと高いバリュエーションで調達できるのかという点を忘れてはいけま せんね。

J-KISSの普及の状況
澤山:これに関しても、J-KISSは新しいスキームなので、その啓蒙のところで少し時間がかかっている部分はあるかもしれません。ここは重要なところなので、僕自身イベントや勉強会を開いたり、共同出資するVCやエンジェル投資家に説明しに行っています。

将来的には、シードにおいてはコンバーティブルで、その後は優先株式でというシリコンバレーで試行錯誤の中で培われてきたような流れが普及していくと思うのですが、日本では普通株式を使ってる資金調達がまだまだけっこうあるんですよね(日本のベンチャーファイナンスの状況についてはこちらをご参考ください)。優先株式やコンバーティブルでの調達がベンチャー業界全体に浸透するという部分ではもう少しかかるかなとは思っています。実際にJ-KISSで調達してよかったという起業家が増えていってそれが伝わればもっと増えていくでしょう。

シリーズA前の買収はどうなるのか?
澤山:シリーズAの資金調達に到達する前に売却した場合とは、転換される前に買収されたらどうなるかということです。これはすなわちプロダクトマーケットフィットにたどり着く前に売却するということで、主にアクハイヤー(Acqui-hire)になり、バリュエーションは10億円以下といった事例になるでしょう。

J-KISSはこのような場合、投資金額の2倍を投資家に返すようになっています。バリュエーション・キャップの条件で株式に転換したほうがリターンがよい場合には、株式に転換するか、2倍の償還かを投資家が選ぶようになっています。つまり最低2倍ということです。

なぜこのようになってるかというと、スモールEXITによるモラルハザードを防ぐためという意味あいが大きいです。例えば投資家が将来の持株が最低10%になるのを見越して、3億円のバリュエーションキャップで3,000万円を投資したとします。そしてその会社が半年か1年経たないうちに、「3億円で会社を売却します」と決めたとします。すると、もしこの「2倍で返す」というのがない場合には、起業家には2.7億円が入ってくるEXITになる一方で、投資家は投資した金額と同じ3,000万円が返ってくるに留まります。そうなると、VCとしてリスクを取って投資したのに、無利子で3,000万を貸したと同じことになってしまいます。こういったモラルハザードが増えることを防ぐために、コンバーティブル・ノートやコンバーティブル・エクイティには、こうしたminimum returnのルールが多くなっています。

ちなみにですが、VCのファンド全体のパフォーマンスにとって、この2倍はあまりインパクトのない数字ではあります。「べき乗則」といって、VCの投資先のほとんどが失敗する一方で、ごく少数の大成功事例が100倍以上のリターンを出すことで、ファンド全体のリターンの帳尻を合せるというのがVCファンドの仕組みです。つまり2倍のリターン事例が増えたとしても、VCファンド全体のパフォーマンスには影響は軽微なはずなんですね。しかし、J-KISSはエンジェル投資家や事業会社といった幅広い投資家に使って欲しいと考えたので、米国のKISSとこの部分も条件を揃え、リスクをとった投資家を守るように設計されています。

J-KISSはシード以降でも使われているのか
澤山:GROOVE Xという会社が11億円の資金調達で、J-KISSと同様のコンバーティブルエクイティを使った事例がありました。このように金額規模の大きい資金調達でも実際に使われています。しかし、本来の設計の意図を考えると、事業フェーズとしてはシードステージのための資金調達のフォーマットになります。


J-KISSの投資契約書を無料で公開中

今回のイベントではこの他にも、たくさんの質問をいただきました。何かご質問やご意見等ございましたら、問い合わせフォームやSNSよりご連絡ください。また、500 Startups Japanでは、アーリーステージのスタートアップのための投資契約書の雛形を無料で公開しています。

参照: 誰もが自由に使える、シード資金調達のための投資契約書(2017年6月更新)
参照:シード投資にスピードと透明性を―、投資契約書「J-KISS」を500 Startups Japanが無償公開
参照:J-KISSに対する反応のまとめ

Miyako Yoshizawa

慶應義塾大学看護医療学部卒業。在学中に海外のヘルステック企業やデジタルヘルス企業に関して取り上げる、HealthTechNewsを立ち上げ、2016年売却。外資系証券会社の株式リサーチ部で、TMT市場に関わる調査アシスタントなどを経て、500 Startups Japanに参画。

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