Top Should Startups Care About Profitability

スタートアップは収益性を気にするべきか? – マーク・サスター

今回は連続起業家でベンチャーキャピタリストの、Mark Suster(マーク・サスター)氏によるブログ『Should Startups Care About Profitability?』を、ご本人の了承の下、翻訳させていただきました。マーク氏は2度起業し、Salesforce.com(セールス・フォース)らへの売却経験がある著名な連続起業家で、現在はLAのVC、Upfront Venturesで投資を行っています。彼はまた、起業家と投資家両方の経験・視点からスタートアップについて取り上げる「Both Sides of the Table」というブログを運営しています。


聡明だがスタートアップ志向ではない人たちと話している時に、完全には共感しあえない話題があります。 その1つは、「収益性は重要なのか」ということです。

カクテルパーティーではよく、「利益があがっていないのに成功できるわけがない!」と、有名なスタートアップが必ず失敗すると自信有り気に話しているのを聞きます。

あるいは、Snapchatがわずかいち四半期の間に20億ドルを失ったことをご存知でしょうか。実際には20億ドルの現金を失ったわけではないと知らなければ、「20億!?一体なんてことだ!とんだ大事件だ!」と思うに違いありません。これはストックオプションに関わる「費用」による損失でしたが、多くの人が記事のヘッドラインだけを読んでいるこの時代、きっとあなたはこの事実を知らず、「数十億ドルもの損害を生じた脱線事故のようなものだ!」と思っていたでしょう。 (それはそれとして、彼らは実際に、その四半期に現金約1億7500万ドルを失っています。こちらの件についてもっと知りたい場合は付録を参照してください)。

あらゆるテックスタートアップには、利益と成長の間に健全な緊張があります。 よりビジネスを早く成長させるには、半年から1年ではなく今日成長に資金を投入できるリソースが必要になります。 これを説明する最も明白な方法は、営業担当者にあります。

年俸12万ドルで上級の営業担当者を6人雇い、その他に月6万ドルのコストがかかっていたとしましょう。この営業担当者が新たなビジネスで案件を成約させるまでに、6ヶ月はかかるでしょう。すると会社の収益性は2四半期の間、それまでを下回りますが、3~12四半期目には劇的に成長しています。

私は明白なことだとわかっていますが、どんなに聡明な人々でも収益性について話す際にはこのことを忘れてしまっているに違いありません。大半のスタートアップのコストの70〜80%は人件費なので、スタートアップの収益性がない時というのは、実は売上を立てるよりも先に採用を拡大しているということなのです。

強固なバランスシートを持たないため、より多くの人を雇うことができなくても大丈夫ですが、成長が遅くなる可能性があることを理解してください。 したがって、利益と成長はトレードオフなのです。

私はしばしば起業家に「あなたの目的は何ですか?あなたは来年か2年以内に会社を売却する可能性がありますか?小規模ビジネスとして経営し、健全な利益を維持する計画でしょうか?いずれVCから資金調達し、より速く成長する会社を築こうとしていますか?」と。

ベンチャーキャピタルは多くのビジネスにとって適切な選択肢ではありません。しかし、いつかVCから調達したいと考えているのなら、ベンチャーキャピタリストが利益よりも成長を重視していることを理解する必要があります。 彼らは高いバーンレートを望んでいるわけではありませんが、ゆるやかな成長に対し投資することは決してありません。

売上高

私はP/Lの状況を見る際には、トップラインに注目して取り掛かるようにしています。何ユニットを販売しているのか、それは増加しているのか、すでに獲得した顧客を上手く繋ぎ止めることができているのか、そうしたことを知りたいと思っています。私が最も優先するのは、成長の要因を理解することです。

ここに今日1000万ドルの収入があるが、将来の見通しが大きく異なっている2社を例にあげるとしましょう。一社は毎年50%売上高を成長させていき、もう一社は5%成長させていくとします。

(どちらが良いかは)よく考えれば非常に明白に思えるかもしれません。しかし、人々が企業について、聞いた情報やメディアからで読んだ情報をもとに瞬時に判断する際に、詳細を検討する時間を取ることはありません。

売上高に関する問題の本質

もちろん、売上高だけでは十分なことは分かりません。 売上高の「質」を理解する必要があります。

  • 1つのプロダクトラインなのか、それとも複数なのか
  • 20%の顧客が売上高全体の80%を占めるのか、上位3顧客が売上高全体の80%を占めるのか(これは「売上高の集中化」と呼ばれ、売上高がどこか特定の企業に集中すればするほど、将来売上高が低下するリスクが高くなります)。
  • 売上高がある特定のセールスパートナーやプラットフォームに依存し、将来的に売上高が脅かされるリスクがあるか?

など

収益は収益ではない

単に金額という視点から売上高の成長を見ればいいということではありません。たとえば、次のグラフを見てください。どちらの企業も毎年同じ売上高を上げていますが、売上原価(Cost of goods sold 略してCOGS)がはるかに低いため、会社1は会社2よりも粗利益率が高いことがわかるでしょう。

「売上原価」は、一つ販売するごとにどのくらいのコストがかかるかを表します。 たとえば、売上高の30%を請求する第三者の販売代理店を通じて製品を販売する場合、売上原価は売上高の30%になります(他の売上原価はないものとした場合)。

事例のグラフは実際にありうるものです。1つ目の会社は、プロダクトを直接(自社の営業担当者経由、またはインターネットで)販売している、通常のソフトウェア会社を表しています。多くのソフトウェア企業は粗利益率が85〜90%であり、これこそまさにソフトウェア業界が歴史的に見て非常に魅力的な業界であった理由です。

会社2は、アドネットワークでオンラインメディア運営者に広告を掲載することで報酬を得る「広告代理店」を代表していると言えるでしょう。この会社の場合、集めた収益の85%をメディア運営者に支払う必要があります。 これは販売額の15〜30%をマージンとして得ている「仲介業者」によくあるモデルです。

頭を振り、「何を当たり前のことを言っているんだ」と思うかもしれませんが、私が知っている最も洗練された人たちでさえ、この「グロス売上高」と「ネット売上高」の問題については、忘れてしまっていると言えるでしょう。

売上高に関する議論はよくわかった。だが、そもそもすべての会社が収益性を求めているわけではないのでは?

必ずしも収益性を求めている訳ではありません。

次の2つの競合するソフトウェア企業を例に考えてみましょう。どちらも66%の売上総利益率を持ち、1年目と同じように会社を経営することにしました。

彼らは両方とも、事業の最初の年に事業資金を調達するために、エンジェルとシードで150万ドルを調達しています。両社は1年目は100万ドルの赤字だったため、銀行残高50万ドルでその年を終えました。 A社は2年目に200万ドルの赤字を出しましたが、その一方でB社はブレイクイーブンとなりました。

ではどちらの会社がより上手く経営しているでしょうか。

これだけでは分からない、というのが正解です。ある人はぱっと見て、A社が「収益性がない」典型的なインターネット業界のスタートアップであると嘆くかもしれません。 結果だけ見れば、彼らは収益ではなく、赤字を倍増させたのです。

A社は実際に何をしたのでしょうか?彼らは成長のためにベンチャーキャピタルから500万ドルの資金を調達しました。この資金を使い、より大規模な開発チームを雇い、2つ目のプロダクトラインを展開することができました。さらにより広範に製品を宣伝するためにマーケティングチームを雇いました。

さらに顧客の需要を増やす方法として、自社の製品が他社の製品に組み込まれるような提携案件に取り組むために、事業開発チームも雇いました。彼らは従業員が快適に感じるようにオフィススペースを拡大し、従業員の定着率を向上させることができました。

彼らの製品に対して、強い市場の需要があった場合、この投資はうまくいきます。

また、B社の経営がA社よりも悪いと言うつもりはありません。経営陣は会社の管理をもっと維持したいと思っていたかもしれませんし、新しい取締役を入れたくなかったのかもしれませんし、株を希薄化させたくなかったのかもしれません。

その答えは長い時間が経つまではわからないでしょう。ターゲットとしている市場が非常に大きく急速に成長している場合、VCから調達している企業は、調達していない企業よりも長期的には有利になりがちです。市場が大きくなければ、コストを低く管理していた会社は、ベンチャーキャピタルから調達しなかったからこそ、より良い条件でのEXITにたどり着き、チームメンバーがお金持ちになれるかもしれません。VCが支援する企業は時に「はじけ飛んで」しまうこともあります。

これはよくあることですが、明白で正しい答えはありません。
この2社の3〜5年目を見てみましょう。

このシナリオでは、当初B社のほうが堅実に見えていたにもかかわらず、A社が行った人材に関する投資の方がより高い年間成長率につながったことが分かります。 5年目の終わりには、A社は累積の事業利益が1,900万ドルを得ており、B社はわずか600万ドルでした。

あなたは両社ともに明るい将来を持っているかもしれないと主張することができますし、そして大抵の場合は正しいでしょう。しかし、その他の場合では、企業Aは成長率を利用して資本を増やし、製品の革新性を高め、マーケティングを強化し、より多くの顧客を獲得し、従業員を魅了し、次第に競合の収益を引き下げていくことも考えられます。

これは、なぜ大規模なインターネット分野において「勝者がほとんどを取る」という結果をもたらすのかをまさに示しています。

そこで、より積極的な “超高成長”インターネット企業を考えてみましょう。無知な解説者が、収益をあげていないのですぐに上手くいかなるとこき下ろすような企業です。

別の言い方をすれば、このような事業に資金を供給するために、少なくとも3,500万ドルの資金調達をベンチャーキャピタルから行わなければならないような企業です。そして、多くの場合、5000万ドル以上を調達しています。

クレイジー?愚かでしょうか? 彼らは「収益を上げる」ために、営業費用をを下げるべきだったのでしょうか。

繰り返しますが、それは状況次第でしょう。成長がここに記したように目覚ましいものであったり、安い資本にアクセスできる場合は、VCから資金を調達しないことがむしろクレイジーでしょう。高い確率で4年目には上場のための上場申請をするようになります。そしてきっとジャーナリストは、「5年間の事業をやっていて、いまだに利益を上げたことがない」、「IPOしようとしているが、赤字を垂れ流している」と喜んで書くでしょう。

これは利益と成長のトレードオフです!

次に誰かがAmazonがずっと赤字を続けていると非難しようとしているときには、これを説明してあげてください。Amazonはこのような急速な成長を続けており、今日獲得した収益の一部を、成長(または買収)に再投資する必要があります。

もし十分に速く成長できない会社であれば、その収益で他のこと、例えば株主に配当などで利益を返すといったことをすべきでしょう。

付録

記事の冒頭で、ストックオプションのインセンティブ費用が現金支出ではないことと、多くの人がこれを誤解してSnapchatが20億ドルを失ったと話している理由について説明しました。彼らは実際には現金を失っていません。

私はストックオプションの交付が株主に全く影響を及ぼしていないと主張しようとは思いません。なぜなら、ストックオプションを交付することで、株主が持つ会社の持分は希薄化します。これはまるでインフレのように働きます。インフレは、価値を失っているようには感じないものです。なぜなら、銀行口座に10,000ドルがあれば、年20%のインフレがあっても、そこには変わらず10,000ドルがあるためです。しかし、それを実際に使おうとした時、以前よりも少なくしか買えなくなっているのです。ストックプションインセンティブは、あなたの持分を希薄化しますが、それでも持株数は変わらないという点で似ています。ストックオプションインセンティブはあなたにはわからない方法で影響を与えてきます。なぜなら、会社はあなたの持つ株式の価格を押し上げようとする一方で、株価を押し下げる可能性があり、おそらくその相関は(複雑過ぎて)あなたには理解できないだろうからです。

経営陣は、優秀な人材が会社にとどまり、イノベーションを起こし、株式の価値を高める上で、これらのインセンティブが必要なのだと説明するでしょうし、それはある程度正しいでしょう。 もちろん、すべてのことと同様に、株主に利益を返すことと、経営陣へ報酬を支払うことにはトレードオフがあります。 一部の上場企業では、トップ経営層への報酬の規模は——たとえ彼らがうまく経営できず最終的に買収されたとしても——報酬はばかげています。

原文記事: Should Startups Care About Profitability?
Photo credit: –Snugg– via Visual Hunt / CC BY-NC

吉澤美弥子

慶應義塾大学看護医療学部卒業。在学中に海外のヘルステック企業やデジタルヘルス企業に関して取り上げる、HealthTechNewsを立ち上げ、2016年売却。外資系証券会社の株式リサーチ部で、TMT市場に関わる調査アシスタントなどを経て、500 Startups Japanに参画。

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