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日本におけるスピンアウト – サラリーマンと起業家の中間点

日本ではこの頃、大企業からのスピンアウトが増えています。具体的にいうと、既存企業の傘下で新規事業を立ち上げて、その後、当該事業を社外の別組織として独立させカーブアウトするケースです。ほとんど全てのケースで親会社は株主のままですが、独立したチームは、親会社以外の投資家から資金調達する事を認められます。企業からのスピンアウトは決して新しいコンセプトではありませんが、最近、スタートアップ界隈で増えています。実際、私たち500 Japanも先日、スピンアウト案件に初投資しました。

リスク回避を好む日本では、スピンアウトがうまくいくのかもしれません。なぜならば、サラリーマンと起業家の中間辺りに位置するからです。最初は大きな組織のセーフティーネット内で新規事業を立ち上げて、それから手応えを感じた段階で、独立することができます。言うまでもなく、起業時に保有できる持分は大幅に減りはしますが、その分、背負うリスクも大幅に減らすことができます。

スピンアウトに積極的な大企業側にも得るものがあります。大きな組織内で新規事業を立ち上げる場合、成長と黒字化を早期に確保しなければならないプレッシャーが大き過ぎることがよく課題として挙げられます。大企業において、新規事業のKPIが既存事業のものと同列に比較されてしまうことは、避けにくいであり、その新規事業が期待通りの業績を達成できない場合、またはその大企業がその新規事業にそれほど注力していない場合、同事業は閉鎖されてしまいます。まさに、イノベーションのジレンマそのものです。

このシナリオでは投資家が1人しかいません – つまり、その大企業の経営陣です。経営陣が、その新規事業に投資する価値がないと判断すれば、そこで全てが終わってしまいます。だからこそ、スタートアップが有利なのです。仮に、500 StartupsがNOと言っても、他の投資家がYESと言うかもしれません。スタートアップであれば、生き残りを図る上で幾つもの選択肢があります。

であれば、社内で注力されなくなった事業を閉鎖するぐらいなら、事業を切り離して自力で飛行させてみれば良いのではないでしょうか?スピンアウトをすれば、大企業側も多大なリスクを負うことなく、複数の新規事業にタネを蒔くことができます。さらに、スピードを遅くしがちな大きな組織の官僚的なオーバーヘッドコストから、新規事業を解き放つこともできます。企業側は事業閉鎖よりはアップサイドを得られ、新規事業側は独立性を得ることができます。

さらに、採用にもプラスの波及効果があります。大企業からスピンアウトした事例が何件かあるだけで、新しいことを創りたい人材をひきつけることができます。イノベーションを後押しする、という企業イメージを定着させることができます。そして、一流の人材を誘致したいと真剣に思っているのであれば、彼らを引き止めることも真剣に考えるべきです。仮に、新規事業がうまくいかなくても、優秀な人材には戻ってきてもらいたいからです。スピンアウトであれば、そういった関係性を維持できるので、彼らも留まってくれるかもしれません。

スピンアウトは、うまくいけば日本にとってなかなか興味深い妥協点になるかもしれません。しかし、何よりもまず、新規事業をリードするチームには、起業家精神が必要です。そして、企業側も、新規事業チームが完全に独立できて、その経営陣に適切な株式インセンティブを付与できるよう、スピンアウトをデザインする必要があります。この2つがクリアできていなければ、私たち500 Japanも、最近行ったスピンアウト案件への投資を実行しなかったと思います。スピンアウトは見た目も感覚も、ジョイントベンチャーではなくスタートアップでなければならないのです。

James Riney

Managing Partner & Head, 500 Startups Japan

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