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起業は何処でもできるけど、スケールするには東京がベスト

数年前に、シリコンバレーの有名な投資会社の方とイベントでファイヤーサイドチャットしたときのことです。イベントの内容はあまり覚えていませんが、シリコンバレーに拠点を移すことについて彼が言った言葉は、なぜかずっと頭から離れませんでした。「トレーダーになりたいのであればニューヨークに拠点を移すべきだ。俳優になりたいのであれば、ロサンゼルスに拠点を移せばいい。でも、起業家になりたいのであれば、シリコンバレーに来るべきだ。」

彼のコメントはあくまでもアメリカ国内の話ですが、日本にもある意味当てはまるのではないか、とずっと考えていました。東京は間違いなく日本におけるシリコンバレーです。それどころか、日本におけるウォール街、日本におけるハリウッドでもあります。さらに、日本におけるワシントンDCでもあります。ほぼどの業界でも、トップを目指す人は東京に来るものなのです。

では、スタートアップの場合はどうなのでしょうか?東京以外の場所でスタートアップを立ち上げられない、という訳ではありません。ただし、検討すべきメリットとデメリットはあります。

メリットとしては、東京を拠点とする前に、規模の小さい都市でプロダクトを試す方が手軽なこともある、という点が挙げられます。地元であれば、個人的な知り合いに初期ユーザーになってもらう事ができますし、地方自治体の方がスタートアップを積極的に支援してくれる傾向にあります。

私たち500 Startups Japanが投資経験のある福岡市と神戸市のスタートアップも、実際にそうでした。福岡市は、スタートアップにとって最適な地域となるために、創業特区を設け、スタートアップビザを発行し、場合によっては規制の緩和もしています。そして、私たちにとって神戸市は重要なパートナーでもあります。神戸市は、私たち500 Startups Japanと共催するアクセラレータープログラムに加えて、顧客の紹介や採用イベントの開催支援、スタートアップの広告活動の支援までもを行っています。神戸市長は、500 Startups Japanのイベントに出席し、公の場でスタートアップの支援を表明してくれています。東京では、そこまでコミットしてくれる政府当局者はなかなか多くありません。

もう一つのメリットはコストです。東京の人件費と家賃は高額です。立ち上げ当初にプロダクト・マーケット・フィットを模索している頃は、コストを低く抑える事が必須です。低いバーンレートを維持できる環境にいながら、プロダクト開発と初期顧客の獲得を行えることは有利に働きます。

とは言え、創業チームが一度成長への手掛かりを掴んだら、次のステップはスケールすることです。会社を成長させるには資本と人材が必要であり、その点、東京は日本のどの都市よりも有利でしょう。

東京の大きなメリットは、ベンチャーキャピタルやスタートアップに投資するほとんどの企業が、東京を拠点にしていることです。近くにいるからこそ、偶然の出会い(セレンディピティ)も生まれます。東京で開催されるイベントやスタートアップ界隈特有のローカル・ネットワークを通じて、東京近郊のスタートアップは、投資家に出会う機会を増やすことができます。逆に、投資家も拠点から遠い所では、支援しようにも何かと勝手が違うので、投資を躊躇しがちかもしれません。拠点から近い所であれば、何度も繰り返し同様の支援経験をしているので、その投資先のためにCFO(最高財務責任者)やオフィススペースを探すのも楽なのです。

もう一つの大きな課題が、人材です。創業メンバーがどんなに優秀であっても、会社の規模を拡大するためには優秀な人材をいずれ採用しなければなりません。東京には日本のトップレベルの人材が集まるので、人材プールはより大きくクオリティも高くなります。他の都市に素晴らしい人材がいない、と言っている訳ではありません。ただ、その母数は少ない上に、スタートアップよりも大企業に就職する傾向が強いことが課題です。パナソニックの大阪本社や任天堂の京都本社は、明らかに優秀な人材を雇用していますが、彼らの中からスタートアップに転職する人はまだ多くはありません。問題の本質は実のところ、人材が均等に配分されていない点にあるのかもしれません。東京では、大企業を離れてスタートアップ業界に飛び込む優秀な人材がどんどん増えています。こうした人材の流動性は、会社をスケールさせたい者にとって有利に働きます。

Paul Graham氏は2006年に発表したエッセイ「How to be Silicon Valley」(第2のシリコンバレーになる方法)で「テクノロジーのハブを築くためには2種類の人材しか必要ありません – すなわち、金持ちとオタクです」と書いています。東京にはこうした人材がたくさんいます。起業はどこででもできますが、スケールするには東京が最適な場所ではないでしょうか。

追伸:500 Startupsは神戸市と連携し、神戸でアクセラレータープログラムを運営しています。全国から応募可能なため、東京以外の都市での起業を考えている方にとっても、良い事業成長の場になるのではないでしょうか。詳細はこちらよりご覧いただけます!

James Riney

Managing Partner & Head, 500 Startups Japan

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