Pilotprogram Hospital

ヘルスケアスタートアップが、医療機関とパイロットを行う際に重要なこと

医療機関向けにサービスを展開するヘルスケアスタートアップにとって、医療機関とパートナーシップを組み、初期プロダクトをパイロット導入してもらうことは、プロダクトを改善し顧客を獲得する重要な第一歩です。

パイロットとは、コントロール可能な環境の下でプロダクトの技術的な価値を試験する、サービス提供者とパイロット導入機関の暫定的な合意のことを言います。新たな技術を導入しようとしている医療機関としては、このパイロットによりリスクを軽減させることができますし、サービス提供者であるスタートアップはこのパイロットによりニーズを明確にし、サービスを改善させることができます。

米国では医療機関内にスタートアップと協同しパイロットプログラムを開始する専門の機関が開設されているところも少なくなく、医療機関をより良くしていく上でスタートアップの最新技術を取り入れることが選択肢の1つになりつつあるのです。そして近年、日本でも大規模な医療機関とスタートアップがパイロットを行うといった取り組みがなされています。

パイロットが引き起こす、スタートアップの失敗

「nice-to-have(あったら良いな)」というプロダクトをパイロットとして展開することは必ずしも難しいことではありません。何故ならパイロットの多くは料金を支払う必要のない試験的導入であるので、医療機関は「絶対に必要」なプロダクトでなく「あったら良いな」と思うプロダクトでも、無料なら試してみてもいいかと考えるからです。

現実には、このパイロットから実際に医療機関が導入するに至らないケースが非常に多く、スタートアップは無料でサービスを展開するために資金を投入し消耗しているということも少なくありません。この現象を米国の投資家は「Death by Pilot」と呼び、医療機関向けにサービスを展開しているヘルステック企業にとって致命的なことだと認識しています。

デジタルヘルスの領域で医療機関向けにサービスを展開している起業家の方は以下のことを考えるといいのではないでしょうか。

  • パイロット費用は回収できるのか
    医療機関側がパイロットのサービスに対して、費用を支払う意思がないのならば、顧客のターゲットが間違っているか、そもそもプロダクトが間違っていると再度省みるべきでしょう。報酬なしでパイロットプロジェクトを行うことは、持続可能ではありません。もし無料で行う場合には、その医療機関の名前と検証結果を営業資料やマーケティング資料に使用する権利を要求したり、他の顧客を紹介してもらうなどして、企業として消耗することなく取り組めるように交渉しましょう。
  • 話をしている担当者は適切か
    パイロットの導入の意志決定だけでなく、実際にそれなりのコストを割いてサービスを導入する意志決定ができる院内の担当者と話ができている必要があります。
  • 有料課金へのマイルストーンはあるか
    無料のパイロットを提供する場合、導入に向けて明確なマイルストーンを設定をする必要があります。契約に向けたマイルストーンの一部としてパイロットを位置づけ、有料顧客化に繋げることができるようにしましょう。

医療機関向けにサービスを展開するには、営業サイクルと導入時のシステム統合に長い時間を費やす必要があります。しかしながら、一度導入されることで、一般的にC向けにヘルスケアサービスを展開するよりも長いLTVを獲得することができます。導入のための第一歩、パイロットで会社を疲弊させることなく、より多くの顧客獲得につなげられるよう、上記の項目を今一度問いてみると良いのではないかと思います。

その他、スマートピルケースのAdhereTechのCEOもパイロットプログラムを行なった経験から、パイロットに挑む際の心構えについてHxRefactoredで語っています。こちらもぜひご覧になってみてください。

吉澤美弥子

慶應義塾大学看護医療学部卒業。在学中に海外のヘルステック企業やデジタルヘルス企業に関して取り上げる、HealthTechNewsを立ち上げ、2016年売却。外資系証券会社の株式リサーチ部で、TMT市場に関わる調査アシスタントなどを経て、500 Startups Japanに参画。

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