Red Ocean

スタートアップの参入が期待できる、新たな領域とは

ここ最近、ソフトウェアそのものの技術的なイノベーションは停滞期に入っています。シリコンバレーのオピニオンリーダーであるElad Gil氏やBenedict Evans氏が昨年、このテーマの記事をブログに投稿しています。日本の状況もさほど変わりありません。B Dash CampやInfinity Ventures Summitをはじめとする、日本で開催される多くのカンファレンスに共通していたテーマは「次に到来する大きなトレンドは?」でした。

直近で一番最後に押し寄せたイノベーションの波は、モバイルでした。このテクノロジーのサイクルに乗って出現したのが、GREE、DeNAやmixiなどの巨大ゲーム企業、そしてメルカリやLINEなどのユニコーン企業です。今も続いているこの波は、そろそろ終わりに近づこうとしています。その中では、モバイル動画が、特にコマースとセットになっている場合に活気付いているようで、ベンチャー資金が流れ込んでいます。ファッションと美容の動画ベンチャーであるC Channelを早期に立ち上げ、すでに50億円以上を調達しているLINEの元CEOは、時代を先読みしていたに違いないでしょう。

ビジネスチャンスのある分野は他にもまだあるにはありますが、我々の業界としては、残っているとしても実現は難しいと感じている人が多いようです。少なくとも消費者向けのものについては、私自身もそのように感じています。そのような中で、日本における消費者向けサービスのビジネスチャンスは、ヘルスケアや金融サービスなどの伝統的産業にあると考えます。これらの産業には、これから劇的に構造を変革するチャンスがあります。これらの産業は規制が厳しく参入に時間もかかりますが、ポテンシャルは大きいです。既存プレイヤーの動きは遅いか、最新テクノロジーに疎いかのどちらか、またはその両方だったりします。もちろん、市場を一旦獲得できれば、他者は容易に追随することができません。

最近まで、こうした市場に取り組んでいる手強いプレイヤーはあまりいませんでした。しかし、先日、TechCrunchに寄稿させていただいた通り、今は、金融サービスを狙う、より強くより経験豊富なチームが形成されており、潤沢な資金を調達し始めています。例えば、モバイルP2P送金を行うKyashや、一般投資家向けにテーマ投資のサービスを提供するFOLIOです。ヘルスケアでも同じような現象が起こっていて、業界をリードするMEDLEYがこの道を切り開いています。

日本で、いま新しいなと感じているのは、起業するファウンダーのタイプです。彼らは、マッキンゼーやソニーといったステータスの高い会社での安定したキャリアを離れて起業しているのです。ちなみに、私自身が起業をするためにJPモルガンを離れたときには、日本人の同僚の多くが「クレイジーなのでは」という眼差しを私に向けていたことを思い出します(アメリカの友人らは逆に、むしろ「やっちまえ!世界を変えるんだ!」という感じでした)。今となっては、当時の同僚の多くが起業したり、スタートアップに参画したり、そのいずれかについてどのようにすれば良いのかのアドバイスを求めてくるようになりました。時代は変わりました。

この変化がなぜ大きな影響をもたらすのかというと、こうした伝統的産業の場合、経験がとても貴重だからです。自分が取り組もうとしている業界で少なくともある程度の経験を有していれば、マーケットの細かい事情を熟知し、顧客や投資家との信頼関係を築き、そして何よりも、営業や人材採用の際に強いネットワークを活用することができます。良い一例が、日本の大手商社である三井物産出身の2名が設立した、私たちのポートフォリオ企業「Circle-In(サークルイン)」です。日本で「商社マン」といえば、リスク回避型社会の日本では、生涯安定を約束する職業の代名詞でもあります。ですが、彼らは全てを投げ打って、現在は、輸送のトラッキングや手配を未だに紙やFAXで行っている、国際物流におけるフォワーディングのクラウドサービスを構築しています。

日本においてスタートアップにチャンスがありそうな分野は、伝統的産業の変革です。「ソフトウェアが世界を飲み込む」トレンドは日本の産業にまだあまり浸透しておらず、こうした産業の変革をめざすスタートアップによる熾烈な競争にも晒されていません。この変化は確実に進んでいくと考えているので、500 Japanはこれらの領域に積極的に投資していくつもりです。なぜならば、今まさにこの領域が、いまだ輝くブルーオーシャンだからです。

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